山梨学院イレブン(写真=小室功)
「厳しい戦いでした」
試合後、1点を守りきって勝った山梨学院高等学校(山梨)、長谷川大監督の語った言葉は、敗れた昌平(埼玉)にも共通する思いだったろう。1月5日のフクダ電子アリーナで行われた第99回高校サッカー選手県準々決勝は、激しい攻守激突の末に山梨学院が準決勝進出を勝ち取った。
今大会、抜群の威力を発揮する山梨学院のハイプレスはこの試合でも健在。立ち上がりから鋭いプレッシャーをかけて、昌平の柴圭汰・小川優介を押し下げて、昌平が得意とするパスワークを寸断。須藤直輝を起点にボールを回していこうとする昌平だが、山梨学院の早い寄せの前にボールを保持することができない。
ハードワークで優位に立った山梨学院は、7分に左サイドでフリーキックを獲得すると、野田武瑠の蹴ったボールをファーサイドで競り勝った一瀬大寿がゴール前に折り返し、久保壮輝が押し込んでゴール。「大寿が折り返してくれると信じていたので、ポジションに入って決めようと思っていた」という久保の先制弾で山梨学院がリードを奪うことに成功する。
リード後も右サイドの新井爽太を中心に攻めていく山梨学院に対し、昌平は前半飲水タイム後から中盤でのプレー強度を高めて対抗しようとするが、攻守切り替えを徹底する山梨学院の前にチャンスを作れないまま前半を終了する。
後半もハイプレスと堅実なブロックで昌平の攻撃を押さえ込んでいた山梨学院だったが、60分過ぎ頃からは、ハードワークの代償として運動量が低下。足を痛める選手の姿が多く見られるようになっていく。一方、ボールを持つシーンが増えた昌平は69分に唐木晃がハイボールをクリアしたあとの着地で足をひねり負傷のアクシデント。直後の70分に右サイドからのボールをゴール正面で受けた須藤直輝がシュート。これは山梨学院の守護神、熊倉匠にキャッチされたものの、ここから終盤にかけて昌平が攻める展開を続けていく。
だが、昌平の猛攻にさらされながらも全員が体を張って守る山梨学院は、篠田大輝に裏を突かれてしまっても、熊倉が前に飛び出しシュートをストップするなど最後まで集中を切らさない守備を展開。1点差を堅持したまま、昌平の攻撃を無得点に抑えて逃げ切りに成功。
「昌平のテクニカルな部分にどう対応するかが今日のテーマだった。選手たちそれぞれがよく役割を全うしてくれて、目指していたところを達成してくれた(長谷川監督)」という山梨学院が、選手の個で優位といわれた昌平を破り、11大会ぶりの日本一を目指し、ベスト4へと進出した。
(文=藤原裕久 写真=小室功)
▽第99回全国高校サッカー選手権
第99回全国高校サッカー選手権