優勝の山梨学院イレブン(写真=オフィシャルサポート)

 1月11日、第99回全国高校サッカー選手権の決勝が埼玉スタジアム2○○2で行われ山梨学院高等学校(山梨)と青森山田(青森)が第88大会以来11年ぶりに選手権の決勝の舞台で高校日本一の座をかけて激突し、PK戦の末に山梨学院高等学校が勝利し3962校の頂点に立った。

 山梨学院の長谷川大監督は試合後、「10回戦って1.2回勝てれば良いなという相手なので、その1回が今日来るようにどう戦っていくかというところを準備して臨みました。だいぶ考えたんですけど、青森山田の出発点は藤原くんかなとずっと思っていたので、センターバックの彼に対してマンマークをつける、ということを考えました。(神奈川大学監督時代に)早稲田大学と戦った時にセンターバックにビルドアッパーが居まして、その選手からの縦パスやらサイドチェンジやらゲームコントロールやら声掛けやらが本当に素晴らしくて、そこをどうやって抑えようかと考えた作戦がこれだったんです。それを今回出せるんじゃないかなと。センターバックに対してフォワードがマンマークをし10対10にしてしまおうということです。それをすることによって後ろのラインにビッタリくっ付いた状態でいるわけなので、(サイドバックの)タビナスくんが上がると1対1になるということでタビナスくんの上りを牽制できるだろうとも考えました。藤原くんにはゲーム中のボールタッチは不参加、全くボールを触らせないようにしましょう、それが今日のゲームプランです」と話した。

 その他のゲームプランに関しては「青森山田さんがサイドで数的優位を作りながら攻めてくるというのは分かっていたので、前半は先程のような策で自分たちが優位に進めたいと。後半になって0-0もしくは1-0で折り返した時に相手が高い位置を焦って取って来るだろうと。そうなった時には相手が高い位置を取る分だけハーフスペースを使って野田などが中盤で受けて起点を作ろうとやったんですけど、想像以上に青森山田さんの圧力が強くて。1点取られた辺りから受けに回ってしまったんですけど、そういう時間帯のなかで逆にこちらもサイドからの攻撃から1点を取れたことがまた息を吹き返すことに繋がったと思います。

 思い描いていたようなゲームの入りから前半を終了して、後半宇野くんがセンターバックの間に落ちてビルドアップをするという形で修正してきたんですけど、こちらも冷静に対応しながらも逆にカウンターを繰り出していくということで対抗できたかなと思います。結果的にはPK戦だったんですけど、決定的なチャンスを青森山田さんに1.2回作られてしまってそれがこんなこともあるのかと思うような感じで入らなかったりと運にも助けられたところはあると思います。今大会"運"が自分たちに流れてきている部分はあったので、それは本当に彼らの1年間の取り組みだったりコロナ禍で我慢してやってきた思いだったり仲間への感謝だったり、色んなことが集まったものです。ここに残った2チームが(全出場校を)代表して勝ち負けを超えてそれを表すような試合になり凄く良かったなと思います」と振り返った。

 スタンドとインカムを使ったやりとりを行っていたが「ベンチ入り人数の関係で、攻撃のセットプレーの分析をスタンドのコーチが、守備のセットプレーの分析をベンチのコーチが行っていました。青森山田さんの守備の配置などを見て今回はこのパターンが良いんじゃないか、この配置でコーナーキックやロングスローを行いましょうと話し合いながらこちらが選手に伝えていました。選手の疲労や状況に応じてセットプレーのパターンを変えていきたいと考えていたので、上からみたアドバイスは有効だったと思います」と明かした。

 選手権優勝を目指して教員を志したことについては「正直まだ実感は湧きません。今回はコロナのこともあって凄く落ち着いて大会に臨めていると思っています。浮き足立つとも背伸びすることもなく、今必要なことを取り組むことができたなと今大会を振り返ると思っています。選手たちには自信とチャレンジする部分をどう植え付けるかのところが一番大事な仕事かなと思っているので、試合に向けてなど彼らにミーティングを含めてしっかり伝えられたのかなと思います。自分の強みを活かしながらチームの為に頑張ってくれたと思うので、自分が優勝をしたくてとか自分のことは忘れてしまうくらい、今年は色々ありましたし皆で取り組んできたことが最後に花開けば良いなと。やらせて頂いている環境のなかで恩返ししなければいけないなと。皆の分も今日は(決勝に残った)2チームが頑張らないとなという気持ちで選手には話していました」と締めくくった。

 徹底的に相手を分析し、相手のストロングポイントを消した山梨学院が今季、練習試合を含めても無敗だった優勝候補筆頭の青森山田を下し11年ぶりに頂点に立った。

▽第99回全国高校サッカー選手権
第99回全国高校サッカー選手権