相手と競り合う履正社FW廣野大河

 4月4日、今年もプリンスリーグ関西が開幕し、そこには白いユニフォームを着てピッチを誰よりも走り回る背番号9の姿があった。新チームになり、去年のジョーカーとしての役割ではなく、中心選手としてチームを引っ張ることが期待される履正社FW廣野大河。昨年度の全国選手権大会大阪予選では5回戦の初芝立命館戦で先発起用されると期待に応え2ゴール。そこから後半の大事な場面での投入が続き、準決勝阪南大高戦では値千金の決勝ゴールを挙る。そして2回戦の帝京長岡戦で敗れてしまったものの、念願の全国の舞台でもピッチを走り回った。

 そんな廣野の代名詞と言えるのが”泥臭いプレー”だ。どんなボールも全力で追いかける。相手DFがボールを持てば猛然とスプリントしてチェイスを仕掛ける。そしてボールを持てば体を張りながらキープし起点を作る。「廣野はうちの太陽だから。彼がいるとカンフル剤になってくれるし、今のチームには欠かせない存在」と平野直樹監督もその存在の大きさを絶賛する。

 泥臭いプレーが売りの廣野のだが、最初からこのプレースタイルではなかったようだ。「小学校の頃は『自分はドリブルが上手い』って勘違いしていて、足元を磨いてくねくねやっていたんですけど、中学でレオSCに入った時にコーチがCFの仕事を教えてくれたんです。それでボールを持つことよりもゴールに向かう為のプレーをするようになって。それでも履正社に入ってからやっぱり何か足りないってなって。ゴールする為には動き出しも大事だけど、気持ちを出していくことも大事だと思って変わっていきました」

 そして彼のプレースタイルの変化に影響する出来事がもう一つある。「中学校の頃にチームのGKの子が白血病になってしまったんです。だから僕の代はGKがずっといなくて。それで高校に入って一回治ったんですけど、また転移してしまって亡くなってしまったんです。彼は別の場所でずっと闘っていたので、僕もピッチの中で戦おうと思ったんです。サッカーをやりたくても出来ない子がいるっていう気持ちがずっと心の片隅にあって、忘れないようにしています。だからきついことがあっても乗り越えられるし、試合でピッチに入る時はいつも一緒に戦うって気持ちで入っています」

 「チームの為に走る」自分のプレースタイルの特徴は?との問いに即答でそう答えた廣野。彼に話を聞く度に出てくるワードは「チームの為に」だ。そこには点を取る意識が強すぎると空回りしてしまう性格も影響している。ある意味自分に言い聞かせているところもあるのだろう。しかし、廣野のボールを全力で追いかける姿を見て奮起しない味方はいない。そして相手にとっては本当に嫌な選手だ。そして小学校の時に磨いたドリブルもしっかり実になっている廣野に今後も注目したい。

▽高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ2021 関西
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