MF渋谷諒太キャプテン
実に3年ぶりの選手権出場だ。
11月14日に行なわれた高校サッカー選手権の千葉県予選決勝は9年連続の同一カードとなった。大一番で顔を合わせるのは流経大柏と市立船橋。U-18高円宮杯プレミアリーグEASTでも鎬を削る名門校同士の対戦は序盤から白熱する。互いに譲らず、そこかしこで激しい攻防が繰り広げられる。その中で流経大柏は先手を取られ、27分にGKデューフ・エマニエル凛太朗(2年)のミスから失点。それでも35分と37分にMF高足龍(3年)が決め、僅か2分で試合をひっくり返した。後半は相手に押し込まれる場面もあったが、田口空我(3年)を中心に粘り強く守って無失点、4分間のアディショナルタイムも耐え、勝利を手にした。
この試合のMVPを挙げるならば、もちろん2得点を奪った高足だろう。ただ、それ以上に目に見えないところでチームを支えていたのが、キャプテンのMF渋谷諒太(3年)だった。ダブルボランチの一角でプレーし、攻守のつなぎ役として奮戦。球際の勝負でも競り負けず、自ら前に運んで攻撃の起点になるパスを前線に送り続けた。
流通経済大柏 vs 市立船橋
優勝した瞬間、感情を爆発させた渋谷。それもそのはずで、この1年間誰よりもチームのために動いてきた。新チーム発足後に投票でキャプテンに選出され、自身も大役を担うつもりで準備を進めてきたが、当初は思うようにチームをまとめられず苦悩。言いたいことを言えず、なかなかチームを一つにまとめられなかった。
そんな時に指揮官からかけられた言葉がある。
「言いたい事を言わずに遠慮しているぐらいなら、キャプテンを辞めたほうがいい」
そこを契機に渋谷は変わった。「榎本さんよりもしゃべろう」。誰よりもコミュニケーションを取り、時には言いたくない言葉を仲間たちに投げかけることもあった。そうした中で議論が生まれ、チームは徐々にまとまっていく。
そして今では、指揮官から絶大な信頼を寄せられる選手に成長を遂げた。
「ピッチ外でも頼りになる選手。ハーフタイムも渋谷がほとんどミーティングしてくれる。僕が考える理想の選手だと思っています」
市立船橋戦のハーフタイムも率先してコミュニケーションを取ろうとした一方で、他の選手も自然の流れで言葉を交わしていた。自分が発信しなくても言葉が出てくるようになったことは、チームがこの1年で大きく成長した証。自身の取り組みが仲間たちにも波及し、集大成となる選手権で本当の意味で一つのチームになった。
選手権開幕まであと1ヶ月半。磨き上げてきたボールを繋ぐスタイルと流経大柏らしい球際の強さをさらに磨き、2007年度以来の日本一を目指す。「3年ぶりの選手権。どんな相手でも常にチャレンジャーであることを忘れず、日本一まで突っ走っていきたい」と言い切ったキャプテンとともに、流経大柏は最後の戦いに挑む。
▽第100回全国高校サッカー選手権千葉予選
第100回全国高校サッカー選手権千葉予選