相生学院上船利徳総監督とジェリー・ペイトン監督(写真提供=相生学院サッカー部)

 創部以来「プロで活躍できる選手の育成」ということにこだわり、世界最高峰プレミアリーグのアーセナル元GKコーチであるジェリー・ペイトンを監督として招聘、第100回全国高校サッカー選手権兵庫予選で初の決勝進出を果たした相生学院。決勝では惜しくも選手権大会優勝の経験もある強豪・滝川第二の前に涙を飲んだが、その戦いぶりは関係者を驚かせた。試合後、相生学院・上船利徳総監督に決勝の振り返りや新チームで期待の選手などについて話をうかがった。

ーーまずは決勝戦を振り返っていただけますでしょうか?

 正直、想像以上に選手達は頑張ってくれて、非常に良かったなと思っています。決勝はどっちに転んでもおかしくない展開でしたが、滝川二高さんはそのシチュエーションをつくり、モノにしました。勝負強さを感じました。もっと成長して、来年リベンジしたいです。

ーー試合前には選手たちにどんなことを話しましたか?

 もちろん相手の分析をして事細かく情報は伝えました。

 全体的には今までやってきた事を全て出し切って、前半から三原則(球際 運動量 切り替え)で滝川二高さんを圧倒しよう、そして1番大事な事は、すべてのシチュエーションを最高に楽しもうと伝えました。

 そして「1つ1つの判断、1対1の局面、セットプレー、攻めている時間、守っている時間、1プレー1プレーすべてを楽しもう。それもみんなで声をかけて楽しもう」と言って送り出しました。

ーー今大会で見えた収穫と課題を教えていただけますでしょうか?

 淡路島で活動を始めて約3年間。「良い選手を育てる」というところを第一にフォーカスして取り組んできました。

 選手が成長していることは、日頃の練習で感じてましたし、既にJリーガー(FW福井悠人=カマタマーレ讃岐来季加入内定)を輩出していたりと、やり方は間違っていないと思ってましたが、公式戦での結果がついてこなくて、「このチームで本当に成長しているのか?」など不安を抱える選手がいたことも事実です。

 しかし今大会を通じて、一戦一戦勝ち進んでいくにあたり、今までやってきたことが凄いことで、良い環境でできていたと迷いなく確信へと変わったことが、今大会の大きな収穫だったかなと思います。

相生学院サッカー部(写真提供=相生学院サッカー部)

 選手たちは本当に頑張ってくれたので、課題はそれほどないと思っているのですが、強いていうなら、決勝の後半ラスト2分に起きたペナルティエリア内でのハンドというアクシデントから見えたものです。

 ペナルティエリアのハンドについては、兵庫県予選の抽選会で全チームの責任者がいる中で、審判委員会から細かく指導を受けました。「手であからさまに阻止しにいった場合のみPKを与える。手に当たってしまった場合はPKにしない」という説明があったため、ペナルティーエリア内でのシュートブロックは手を腰の後ろにしなくて良いと選手達に伝えていました。そのため、あの場面もハンドではないと思っていたのですが、そもそもそういうシチュエーションを作らなければ問題がなかったことですし、もしそうなったとしても2点3点と取れるチームにしなければならないと強く思いました。

 トーナメントは一発勝負だからこそ、何が起こるか分からない。来年は隙を見せないチームを作っていきたいと思います。

 そして、滝川二高さんには兵庫県の代表として全国で頑張ってもらいたいです。

ーーーー新チームの軸として期待する選手はいますでしょうか?

 GK西野立晟やFW村越優太は2年生ながら、チームの中心選手として今大会は大活躍してくれました。現状に満足せずに勘違いしなければ彼らは間違いなく中心選手になると思います。

 またSBの吉村陽楽(2年)、SHの森川透海(2年)はスタメンとしてプレーしましたが、先輩たちのサポートがあっての活躍でした。彼らがどれだけチームを引っ張る存在になれるかで、彼らの将来も変わればチームの成績も変わってくると思います。期待ですね。

 それと、今年大活躍した背番号4の日高光揮(3年)の弟である、背番号15の日高吏都(1年)です。今大会は出場はできませんでしたが、1年生として決勝のメンバーに入るほどのポテンシャルを備えた期待のDF。彼がこれからどこまで成長するか、大きな期待をしています。兄の光揮が大活躍した分、プレッシャーはあると思いますが、コツコツと成長していってほしいと思っています。

▽第100回全国高校サッカー選手権兵庫予選
第100回全国高校サッカー選手権兵庫予選