3回戦に挑んだ履正社イレブン(写真=会田健司)

 この暑さの中で3連戦目を迎えた履正社イレブンの動きは精彩を欠いた。そこには注目度の高い試合の後のメンタル面の難しさもあったのかもしれない。

 しかしこの3回戦を勝ち抜けば1日の休息日が与えられ、心身ともにリフレッシュして準々決勝を迎えられる。そういう意味では結果的にこの3回戦こそが山場だった。

 前半、攻撃陣は相手の強気な守備の前に沈黙。守備でも湘南工大附のMF10中山陽輝(2年)に自由を与えてしまい、18分にはその中山を起点にFW11大木啓汰(3年)に先制ゴールを許した。

 1点ビハインドでベンチに戻ってきた選手たちには平野直樹監督の檄が飛び、選手も入れ替えた後半開始からは相手を上回る内容を見せる。

今大会大活躍を見せた履正社FW9古田和之介(写真=会田健司)

 そして迎えた58分、左サイドに流れたFW9古田和之介(3年)がドリブルでDFをかわすと、そのまま切れ込み、FW19河野朔太(2年)、MF11宇都宮翔菜太(2年)と繋いで宇都宮が自身のシュートのこぼれを押し込み同点に追いつく。

 その後も勝ち越しゴールを狙う履正社だったが、ストロングである左サイドのMF10名願斗哉(3年)とDF2西坂斗和(3年)のコンビは相手DFにうまく対応されてしまい、名願が中央にプレーエリアを移すも崩しきれず。70分で勝負を決めることが出来ずPK戦で敗れた。

 ゲーム後、平野監督は「あと3試合やりたかったです。子供たちの成長を考えるとあと1試合2試合でもやりたかった。今日のゲームを乗り切れば休息日を入れて同じコンディションで出来たので」と敗戦を悔しがった。

敗戦に肩を落とす履正社イレブン(写真=会田健司)

 キャプテンの古田は悔し涙を流しながら「自分たちの甘さや弱さが出たと思います。全国で1位になるというのはそんな簡単なことではないし、今のままの自分たちでは絶対なれない。でも、冬にもう一回チャンスがあるので絶対日本一になりたいと思います」と話した。

 選手権99回大会の初戦で帝京長岡に敗れた後の平野監督の「久しぶりに出場するチームと全国大会常連のチームの差」という言葉。だからこそ指揮官はプレミアリーグや全国大会で強豪との試合を数多くこなすことにこだわってきた。

 コンスタントに激戦区の大阪を勝ち抜く難しさがありながら、履正社はもう一段上のレベルのチームを目指している。毎年当たり前のように全国大会に出場することで、チームとしてのその経験が選手の成長につながるからだ。 

 今年のプレミアリーグWEST開幕戦でサガン鳥栖U-18のレベルの高さを経験し、基準を上げる必要性を知ったように、経験こそが成長につながる。

 この全国大会で大活躍を見せた古田は明らかな成長を感じさせた。古田は「初めての全国大会で経験を積めたところはありますが、チームとして基準を2.3段階上げないといけないと強く感じました」と話す。この試合では後半から出場した2年生たちが躍動。平野監督が「チーム内の競争が激しくなる」と話した通り収穫は大きい。

 全国制覇という目標は達成できなかった履正社だが、また新たな基準を得たことで、彼らはまた大きくなるだろう。

 プレミアは少しでも上の順位で残留。選手権でも全国大会に出場。真の強豪を目指すチームのハードルは高い。そしてそこに向けての挑戦はもう始まっている。

 (文・写真=会田健司)
▽令和4年度全国高校サッカーインターハイ(総体)
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