クロスへの入り方を工夫しヘディングシュートを見事に突き刺す(写真=会田健司)

 今大会、チーム内で福田と並びMVP級の働きをみせたのがFW西丸道人(にしまる みんと/2年)だ。

 西丸は裏への抜け出しや、思い切りの良いシュートなど攻撃面での良さも目立ったが、今大会でとりわけ効果的だったのが前線での献身的なプレスだ。

 神村学園はインターハイでチーム全体のコンディションが上がらず初戦敗退。この夏の遠征でもチーム状態が上向かない中で、有村圭一郎監督が2つの約束事を決めた。それが"奪われた瞬間からの5秒間"と、そこで奪いきれなかったら"30mスプリントして帰る"という守備への切り替えの速さだった。

 これによって輝いたのが西丸だ。

 「今までは"点を取るのが俺の仕事でしょ?"というのが強かったですが、それプラスチームを助けることが出来つつあるのかなと思います。こういう姿はあまり見たことがないです」と指揮官もその変化ぶりに驚く。

 西丸も「自分は2年生なので、出ていない3年生やここに来てない3年生の分までやらないといけないと自分の中で決めているので、そこは切り替えだったり球際のところはチームで一番やろうと思っています」と意識が変わったと話す。

神村学園FW西丸道人(写真=会田健司)

 しかし、守備の意識が高くなったことでゴールへの意欲が落ちることはない。

 静岡学園戦で2ゴールを決めても、「最近得点が取れてなかったので良かったんですが、2点取る人と3点取る人の差があると思うので、師王さんみたいに2点取ってから3点目を取れる人間にならないといけないと思いました」と2ゴールの喜びよりも3点目を取れなかったことを悔やんだ。

 さらに「FWは何点取ったかとか、点数で勝たせられるかが大事なので、自分より多くとってる人がいるというのは悔しいです。師王さんは違いや結果を残すと思うので、自分もそこに嚙みついて名前を残していかないといけない」と続けた。

 そして西丸がここまで危機感を持つのには1年生のFW名和田我空の存在も大きい。

 「自分は1年生から出ていたんですけど、代表だったり個人として結果を残していないので、(名和田が)入って来ていきなりスタメンだったり、代表に入っているというところでは負けていられないし、FWだったら我空にも負けていないと思うので、彼にも良さはありますけど、自分の良さをしっかり出して、"代表選手もいるけど西丸もいるよ!"というぐらいになりたい」

 中学3年時に全国中学サッカー大会で優勝し、高校入学前からプリンスリーグで出場機会を得て、1年生から10番を背負うなど注目される名和田。その名和田が2トップの一角に入るケースが増え、西丸はサイドハーフでの出場や途中出場が増えた。

神村学園イレブン(写真=会田健司)

 それだけに名和田が国体で不在となった今大会で結果を残すことが西丸にとって重要課題だった。

 「サイドに行ったり、九州大会の時はサブで途中から行こうという話もあったり、難しい時もあったんですけど、途中からだと時間も物足りなさを感じていたので、監督に"こいつを最初から出さないといけないな"と思わせるぐらいやろうと思っていました」

 悔しい想いをしていただけに誰よりも強い気持ちで今大会に挑んだ西丸。

 「我空はボールを持った時には自分より何十倍と上手いんですけど、背後に抜けてスペースを空ける動きだったり、自分は無駄走りを頑張ろうと思っているので、そこが我空にはない自分の良さだと思います」 

 ゴールを決めた上で、オフザボールの動き出しやフィジカルの強さ、そして守備での献身性。誰が見てもチーム内で必要不可欠な選手と認識されることが出来ればFWのスタメン奪取も見えてくる。

 有村監督も「彼の特徴も出るし、チームは助かる。そのことにあいつも気付き始めている。(名和田に)そんなに簡単ではないと上級生が示してくれている」と西丸がみせた献身性を評価。

 超高校級と言われる絶対的エースの福田と、スーパールーキーの名和田。この2人と切磋琢磨することでFW西丸道人はさらに成長する。

 他の2人にはない武器の"泥臭さ"で西丸はチームに欠かせない選手を目指す。

 (文・写真=会田健司)

▽ユースワールドチャレンジ・プレ大会 2022
ユースワールドチャレンジ・プレ大会 2022