国士舘・本田TA(写真=佐藤亮太)
とはいえ、少々、出来すぎの感は否めないがFW9加藤翠生は「いつもこのくらい点が取れる練習をしています。試合を通じて、自分たちとしては思い通りにできましたが、もう少し取りたかった」と物足りない様子だった。
それにしてもなぜ、8得点とれたのか。
「きょうはいつもより決めるときに決められたというのが良いところでした」と評した習志野、流通経済大柏など強豪校を指導し、国士舘で就任3年目となる本田裕一郎テクニカルアドバイザー(以下・本田TA)。
「どこが良かったか?それは前線のプレスが良かったからと思います」
2トップで起用された3得点のFW9加藤とFW22ワフダーン康音(やすいん)。機動力の加藤と長身のワフダーン。この2人が前線からプレスを掛け続け、相手の機先を制するように前に蹴らせなかった。大量得点にはこうした滅私奉公があるからこそだ。
また本田TA、試合前にある指示を出していた。
「はじめからエンジン全開で。まずは5分で決めてこい」
その意図を「ゲームの入りかたでダラダラせず、いきなりスイッチを入れていこうと。それで5分で点を取れと伝えました」その指示通り、その5分で先制点をあげるから驚く。また得点はいずれも相手の守備を崩してのものだけに余計、価値がある。
「きょうはそれほどダメなところはなく、良いシーンが目に留まりました。なかなかよかったでしょ」と顔を綻ばせたのもわかる。
この本田TAについて、選手はこのように話す。
「(ポジション的に)結果のことは言われます。FWで起用されたときは点を取らないと交代になるので、きょうは結果取れてよかったです(FW9加藤)」
「シュート1本からにこだわっていて、また基礎的なところではひとつひとつ厳しく指導されます(MF8大関)」(※技術面でいえば、ハーフタイム中、控え選手のシュート練習ではゴールの四隅を狙うように指示を与える)
「この時代、あれだけ言ってくれる人はいないので逆にメンタルが強くなりますし、あれ以上言ってくれる人はもう出会わないと思います。そこをプラスに思えば、それだけ求められているなと思います(GK1大阪竜也)」
その風貌は、厳しい指導者そのものだが試合前で耳にした語り口は柔らかく、噛んで含めるような説明でわかりやすい。そのサングラスの奥では厳しくも温かいまなざしで選手を見守っている。
(文・写真=佐藤亮太)