甲南がMF8小嶋ルカのゴールで息を吹き返す(写真=会田健司)
勝つことで自信を付けてきた甲南は「セットプレーや細かいところまでミーティングで話して、コーチ陣も含め全員でベスト8を目指して強度の高い練習をやってきました」とこの一戦に準備を重ねてきた。「(神戸弘陵は)強かったです。強かったですけど、前半は最少失点でいけましたし手応えはありました」と強豪を相手に前半を1失点で凌いだことでこの試合でも選手たちは自信を深めた。
「後ろは5枚で数的優位をとって、一人で守れなかったら二人で守る。二人で守れなかったら三人でというのを心掛けていました。ファーストディフェンスが一発で行かずについて行って、取り切れなくても後ろに下げさせたり、攻撃をストップさせるようにやっていました。相手に回されて体力的にキツイ部分もあったんですが、3年生がしんどい顔をせず後輩を盛り上げて、"相手をビビらせるぐらいの気持ちで後半も行くぞ"とハーフタイムでは話していました」
そして勝負の後半。44分にCKから2点目を取られたが、直後にMF8小嶋ルカ(3年)が左足で強烈なボレーを突き刺し1点差に迫った。「(小嶋のゴールは)痺れましたね。2点目を取られて"ヤバいな"と思ってたところで決めてくれて、あの時は泣きそうになりながら、もう一回スイッチを入れ直せました」とこのゴールが甲南イレブンに勇気を与えた。
終わってみれば1-5と差を開けられてしまったが、77分までは1-2の状況を続けた甲南にとっては強豪相手に善戦したと言える試合となった。
これで3年生は引退となるが「最初は結果を残せなくても、最後にこうやって良い試合が出来て。ベスト16でしたけど、人としても成長できるし、サッカーも上手くなる。後輩にはサッカーの楽しさを一番伝えたい」とキャプテンは後輩たちに言葉を残した。
上手くいかない時期も長く苦しんだ吉村だったが、この選手権を通してその苦しみを喜びや楽しみに変えることが出来た。
「前の代のキャプテンがほんまにリーダーシップ力が高くて、僕も尊敬していて。その人からキャプテンを引き継いだので、メンタル面でしんどい部分もありました。どうやったらみんながついてきてくれるか、どうやったら効率よくチームを回せるのか、そういうところを考えてやってきたので人として凄く成長できた」。
晴れやかな表情でそう語った吉村。苦しんで努力をしてきた者だけが得られる達成感がこの敗戦の中には詰まっていた。
(文・写真=会田健司)
▽第102回全国高校サッカー選手権兵庫予選
第102回全国高校サッカー選手権兵庫予選