後半の修正点を選手たちに伝え、ハーフタイムも終わりに近づいたところで指揮官の顔つきが少し険しくなった。

 「もっとお互いに声を出さないと。選手権だぞ!わかってるのか?集中しないと。もう一回冷静に早く攻めよう」と指揮官の真剣な眼差しから発せられるこの言葉に触発されたのか後半の麻布大附はスタートからプレッシングを強め、相手のストロングポイントを消しにかかると、60分には記録上はオウンゴールとなったもののキャプテンのFW9柳瀬怜の裏への抜け出しから追加点をあげ、粘る綾瀬を振り切った。

 この結果に安彦監督は「もう一回やらなきゃってところでテンポが上がったのは良かったです」と満足げに切り出した。続けて「(選手権というのは)やっぱりみんながここに思いを込めてやる大会じゃないですか。別にサッカーはこれで終わりじゃないとは思うんですけど、ここでサッカーを辞める子もいれば、3年間ここにかけてきた子の思いとか、保護者も含めて全部詰まっているので、嘘のつけない大会だよってっていうのはずっと言ってきていて…ただ、なかなかわからないですよね経験しないと。でも負けて気づくなら、最初から気づかせてあげた方がずっと良いと思って。彼らも舐めているつもりはさらさらないんです絶対に。でもちょっと違うんじゃないか?と…彼らのかける思いと綾瀬さんの思いが。ちょっと今日は足りないじゃないのって」とこの試合に対する熱い思いを明かした。

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▽第103回全国高校サッカー選手権神奈川予選
第103回全国高校サッカー選手権神奈川予選