PK戦でも常葉大橘は一歩も引かない。互いに1本ずつの失敗で迎えた藤枝順心の3人目が枠を外し2-1とリードを奪う。藤枝順心も4人、5人目と粘りを見せるが、最後は、常葉大橘DF4松永紗依がキッチリとゴールに納め、熱戦にピリオドを打った。キッカーに「思いっきり取ってこい」と声をかけたという落合監督の言葉が、その瞬間、全員の背中を押していた。

 落合監督はこの春、男子チームのコーチから女子チームの指導へ。決勝までの2か月は「選手やスタッフの思い入れがすごかった」と胸を熱くする。試合前、前監督である後藤さんの姿を見かけ選手たちには「みんなが頑張っている姿が恩返しにつながる」と話した。その思いが、選手たちにもしっかりと届いていた。

 苦しい場面で数々のピンチを救ったDF3上杉恵は「1点決められた後は苦しかったけど、みんなで絶対守り切るって思ってました。自然と笑顔になって、勝ちしか見えなかった」と言う。勝った瞬間、自然と涙が溢れた。互いに励まし合い、声を掛け合い続けた常葉大橘の姿勢は、数字以上にこの試合を象徴するものだった。

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