一発勝負で「振り切る」強さ。それを手に入れるため、「開始10分で5本のシュート」という明確な目標を与えたにも関わらず、選手たちは「失敗しない、しちゃいけない」という心のブレーキを外しきれなかった。この心のコントロールこそが、渡邊監督が選手とともに乗り越えようとした最大の壁だった。
さらに、チームの命運を分けたのは、エースFW10上更家晴希の負傷退場というあまりにも痛いアクシデント。両足の骨折から復帰したばかりの点取り屋が、再びピッチで倒れた瞬間、厚木北の描くストーリーは大きく歪んでしまった。
それでも、渡邊監督は勝利への覚悟を見せた。サブメンバーを全員3年生で固めるという決断は、「3年生の力を見せないと、今後勝ちにいく上でやっぱり力が出ないから」という、彼らの背中を押すための渾身の策だった。
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▽第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選
第104回全国高校サッカー選手権神奈川予選