後半も42分に長井が強烈な左足FKでゴールを狙い、44分にも連続CKで流れを握り続ける今治東。対する48分に山形中央は土田からスピード豊かなFW20須藤 蒼太(2年)を投入し、プレッシングのラインを上げて対抗。試合は互角の様相を呈してきた。

 しかし、今治東にはこの男がいた。55分・右サイドからのパスをペナルティーエリア前・中央で受けたFW髙瀬はペナルティーエリア左に走りこむ尾上に相手GKと1対1となる絶妙のスルーパス。そして相手DFの寄せを予測した尾上からリターンでパス受けると右足で確実に流し込んで追加点を奪った。

 その後、今治東はスピードスターのFW11嶋貫 雑音(2年)やモンテディオ山形の名DFだった太田 雅之氏を父に持つ主将のMF12太田 龍哉(3年)などフレッシュな選手を投入して立ち位置も変えてきた山形中央に押し込まれる場面もあったが、終盤には機を見て的確な立ち位置からボールを回収すると、カウンターとポゼッションを状況によって使い分ける堂々たる戦いで2対0。「やってきたことは表現してくれた」(羽角 哲弘監督)山形中央との激戦を制した今治東が1月3日(金)駒沢陸上競技場12:05キックオフとなる静岡学園(静岡)との3回戦へ駒を進めた。

 試合直後のインタビューでは「本当に山形中央さんもバランスよく相手を研究していた」とまずは相手を讃えた谷監督は「失うものなく戦っていきたい」と高校サッカー界に名だたる名門を相手にする大一番を前にしても淡々とした表情。愛媛県勢としては第83回の済美(1回戦・実践学園に3対1)以来、15年ぶりとなる初出場初勝利をあげた今治東は、「緊張はしなかった。冷静に撃つことができたので、次につながるゴールになった」エース・髙瀬をフィニッシャーにする双方向の攻守で、目標である全国ベスト8へのラストハードルを超えにいく。

(文・写真=甲斐雅人)

▽第98回全国高校サッカー選手権大会
第98回全国高校サッカー選手権大会