健闘虚しく敗れた日体大荏原

応援の迫力もさることながら、プレーの迫力も両チームとも凄みがある。お互いに最前線へとボールを素早く送るスタイルで場面場面で激しい球際の闘いが繰り広げられる。特に駒澤大学高等学校11番佐藤海来に対して、日体大荏原の5番手島大雅と14番藤田航輔の空中戦での競り合いは高校サッカーらしいクリーンで強度の高いマッチアップが繰り広げられる。

DFラインからは時間をかけずに蹴るスタイルの両チームだったが、時間が経つにつれて似たサッカーであれば自力で勝る駒澤大学高等学校がセカンドボールを拾い押し込む時間が増え始める。対する日体大荏原はチーム全員の共通意識が統率されていて、しっかりと自陣に引いてブロックを作り、ゴール前に進入されてもPA内には9人が戻り最後のシュート場面では相手をフリーにさせない。

スコアレスで折り返した後半も前半の図式は変わらない。攻める駒澤大学高等学校、守る日体大荏原。中央を固める日体大荏原に対し、空いたサイドのスペースを起点にセンタリングから幾度となくゴール前へ配給するが、日体大荏原のDF陣の奮闘となんといってもキャプテン GK1番見並玲温の安定したハイボールの処理、セーブ連発でゴールラインを割らせない。結局、延長を加えた前後半で得点は生まれずPK戦へと突入する。

両チーム1人ずつ失敗する中で7人目。先攻の駒澤大学高等学校が成功した後の日体大荏原7人目のキッカーが失敗。歓喜の声で鳴り響く駒沢第二球場で僅差の勝敗が決する。ジャイアントキリングまで本当にあと一歩まで迫った日体大荏原の奮闘に観客、さらには駒澤大学高等学校側のスタンドからも健闘を称える拍手と声援が木霊する。苦しんだ前大会王者の駒澤大学高等学校だったが、最後の最後で勝負強さをみせ次戦へと駒を進めた。

(文・写真=佐々木竜太)

▽第98回全国高校サッカー選手権東京予選
第98回全国高校サッカー選手権東京予選