すると、岡山監督の予想通り前から圧力を掛けて来た相手に対して、市川とMF重松勇樹のダブルボランチが機能。セカンドボールを拾う回数が増え、前掛かりになった相手の裏を突く機会が増加した。後半9分にはMF富田光がカウンターから裏へと抜け出してチャンスを作ったが最後のところでクロスが合わない。それでも、着実に相手ゴールへと近づいている事は感じさせた。
同15分には途中出場のFW平山晟が右サイドから1人かわしてシュートを放つもGKのファインセーブに阻まれる。これでも得点が奪えない中京大中京は、「県大会の決勝リーグでも流れを変えるチャンスメーカーだった」(岡山監督)という攻撃の切り札MF松岡広大を同27分に投入。
すると、この交代策がピタリとはまる。試合終了間際の同32分。DF水口豪が右サイドからロングスローをゴール前に入れると、ニアに走り込んできたその松岡が右足で押し込み待望の先制点。これで逃げ切るだけとなった中京大中京は駒沢大高の攻撃を凌ぎ切って熱戦に終止符を打った。
この試合で殊勲の決勝ゴールを奪った松岡だが、実は得点シーンが試合に入ってからのファーストタッチ。しかも、試合が終わるまでその後はボールに触れていないというまさかの試合になった。本人も「持っている」と振り返ったように大仕事をやってのけた松岡は得点シーンを振り返って「水口のロングスローが飛ぶ事は分かっていたし、足だけ伸ばせば体をぶつけられても決められるなと思っていた」とそのワンチャンスを見逃さなかった。 劇的な勝ち方で勢いに乗るチームは2回戦もこの勢いで勝利を掴みにいく。
【取材・文・写真=松尾祐希】