近江イレブン(写真提供=オフィシャルサポート)

 後半に入ると近江が主導権を握る展開に。前半で意図的に神村学園の立ち位置を乱したことによって生まれたスペースに入り込み、ポゼッションで圧倒。7冨板優馬(3年)も左サイドに留まらず変幻自在なドリブルで魅せ、56分には前田高孝が満を持して送り込んだスーパーサブFW9岡島翔生(3年)が抜け出しシュート。59分にも右MF2宮田遥斗(3年)がミドルシュート、70分には冨板がGKをかわすループシュートを放つなど決定機を数多く作った。
 しかし、ここで近江がことごとく決め切れなかったことが試合の流れを変える。神村学園は飲水タイム前に佐藤をインサイドMF・さらにボランチの位置まで下げて「4-2-3-1」システムとし永芳の孤立化を防ぐと、幅を持ったビルドアップで徐々にリズムを取り戻すことに成功。70分の大ピンチを切り抜けると、72分には佐藤が40メートルドリブルからのシュートで味方を鼓舞した。
 そして誰もがPK戦を予測し始めた79分……。右サイドを起点とし数度サイドを揺さぶった神村学園は左サイドからMF20小林力斗がほぼ蹴るコースのない状態からマイナス気味の左足クロスをゴール前の福田に供給。さらに福田は相手DFと競り合い下がりながら滞空時間の長いヘッドでゴール左隅にコントロールされたヘディングシュート。「これが、U-16日本代表の力だ!」と言わんばかりの先制ゴールは、グットゲームに決着を付ける一撃となった。

 しかしながらことこの一戦に関しては敗者と勝者には全く差がなかったと言えるもの。富山第一(富山)との3回戦に駒を進めた神村学園と共に間違いなく「グッドルーザー」だった近江にも万雷の拍手を送りたい。

(文=寺下友徳)

▽第99回全国高校サッカー選手権
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