決勝弾の履正社2年生FW廣野大河

 後半に入り膠着状態が続くと両監督が切り札を送り出す。阪南大高は右サイドにドリブラーの11番MF田井光を投入しサイドを攻略に掛かる。対する履正社も運動量豊富な20番FW廣野大河を投入しDFラインの裏を狙う。するとこの交代で試合が動き出す。阪南大高は66分、前線中央でFW鈴木起点になり右サイドに展開しMF田井がドリブルで縦に仕掛けDFとGKの間に早いクロスボールを入れると、ゴール前に飛び込んだFW鈴木が右足で合わせゴール。残り15分を切ったところで阪南大高が勝ち越しに成功する。再びリードを許した履正社だったが70分、17番DF向晃生の右CKにファーサイドで4番DF舩田陸人が打点の高いヘディングで合わせゴール。更に72分、中盤右サイド15番MF池田喜晴のロングフィードにDFの裏に抜け出したFW廣野が胸でコントロールすると「失点して舩田君がヘディング決めてくれて、先輩の背中をみて自分がやらないと」とDFを抑えながら倒れるも更に右足を出しシュート。ボールは廣野が倒れたタイミングで前に出たGKの横をすり抜けゴールに吸い込まれる。連続得点で履正社が土壇場で逆転に成功する。4分のアディショナルタイムに入り、負けられない阪南大高もカウンターからFW鈴木が決定機を迎えるも強烈な右足のシュートはGKの正面に。このピンチを凌いだ履正社がこのまま逃げ切りタイムアップ。昨年のリベンジを果たした履正社が3-2で勝利し決勝に進出した。

 決勝点を挙げた2年生のFW廣野がこの選手権で覚醒中だ。FW李が怪我の為5回戦の初芝立命館戦で先発起用され2得点を挙げると、6回戦の大阪朝鮮高級学校戦、準々決勝の近大附戦でも途中出場しその運動量で前線を活性化させ流れを引き寄せた。後半FW廣野が出場すれば前線でのチェイシングと裏を狙う動きでギアを上げる事ができる。結果を残すことにより持ち前の気持ちを前面に出すプレーに加え自信も付いてきている。この日の決勝ゴールのシーンでも「高めのボールが来て最初はヘディングしようと思ったんですけど、キーパーがあんまり出て来てなかったので胸トラにしてキーパーが出てきたんで(体制が)崩れながらでも打った」GKの動きをしっかり確認した上でより良い判断ができた。「泥臭くていいゴールだったね」と平野監督も喜んだ値千金のゴールで決めた決勝進出。「チーム一丸となって6年ぶりの決勝も勝って全国に行きたいです」と意気込んだジョーカー廣野が決勝の舞台でも鍵を握る存在となるだろう。

 試合後、履正社・平野直樹監督は「もう少しボールをうまく回していきたかったんだけど、うちの前目のワイドの子が怖がって行けなかったんで相手を下げさせられなかった。行くところは行かないと。やられちゃいけないと思ってアタッカーが一生懸命守備にパワーを使ってしまって攻撃に精彩を欠いてしまった。(攻守)両方をやるパワーをもってやらないとなかなか上では勝っていけないので。守って勝つなんてサッカーじゃ太刀打ちできないから、攻める時間帯を大事にしてやっぱりパンチを出していかないと打たれっぱなしになってしまうから。そこでの殴り合いで今日は粘り強く最後まで出来て勝てた。交代で出た選手が一生懸命気持ちを出してやってくれたんで凄くよかった」と試合を振り返った。決勝の金光大阪戦に向けては「また難しいゲームになると思うよ。うちがボールを握ると思うけど金光さんも勝負に徹してやってくると思うので、ちょっとしたミスがゲームを左右する可能性は十分あるなと。今日の桐蔭さんの戦い方もうちと似たところがあるので参考にさせてもらってしっかり準備して頑張りたいと思います」と意気込みを語った。

(文=会田健司 写真=谷口一樹)

▽第99回全国高校サッカー選手権大阪予選
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