65分勝ち越しゴールを沈め右指を突き出す明徳義塾DF岡崎 航大(3年)(写真=寺下友徳)

 ただ、高揚感と落胆が交差する中でも1980年度・第59回全国高校サッカー選手権で西目農(現:西目・秋田県)のFWとしてキックオフゴールの偉業も達成している明徳義塾・小松晃監督は極めて冷静だった。「全然楽しめてないぞ。もっと楽しめ」とまずは選手たちの気持ちを整えた上で、続いて前半途中から問題が生じていた守備の改善策を指示。

 「前半はDFラインに吸収されていたボランチの位置を高めにおいて、DFラインも上げてコンパクトにすることで後半は修正できた」とキャプテンのDF松下総龍(3年)も振り返ったように、後半、明徳義塾は格段に状態を上げてきた。

 小松監督は同時に3トップの立ち位置も修正する。後半からは持田、泉幸輝(3年)の2シャドーをよりインサイドに置くと同時にに3トップの頂点には「前半は3トップが張りすぎていたので自分が少し落ちてボールを受けることを心がけようとした」喜納瑠唯(3年)を投入。さらに54分からは右サイドに原山元(2年)を入れるなどフレッシュな選手でサイドの制圧にも務めた。

 そんな明徳義塾の布石は残り25分を切ってから怒涛の3得点になって成就する。56分に原山の右グラウンダークロスから「こぼれ球を予測して入ってきた」喜納が同点ゴールをを決めると、65分にはCKからの混戦から攻め残っていたDF岡﨑航大(3年)が右足で豪快に逆転ゴール。試合終了間際には泉がミドルシュートを突き刺し3-1。明徳義塾が鮮やかな逆転勝ちで4年ぶり8度目の選手権出場を決めた。

 「この世代は2年間負けているイメージしかなかったので『もう2週間帰省が伸びるけど、全国で頑張ってくるわ、と友だちに言う方がカッコイイだろ?』というところから始めた」と試合後、メンタル面からの改善に取り組み続けていたことを明かした小松監督。かつてはDF三都主アレサンドロといった日本代表も生み出している名門は2020年冬、その復活過程を築き上げる首都圏への旅に出る。

(文・写真=寺下友徳)

▽第99回全国高校サッカー選手権高知予選
第99回全国高校サッカー選手権高知予選