あと一歩で勝利を逃し悔しい表情を見せる多賀城高イレブン(写真=小林健志)
後半に入ると、東北生文大は攻撃の勢いを強めたが、なかなか多賀城の守備組織を崩せない。すると川村監督は後半途中、3年生選手を多く投入し、さらに攻撃にパワーを与えた。こうして攻め続けた成果がようやく出たのが試合終了間際の78分。東北生文大は主将FW小畑樹(3年)が「フリーで落としをもらったので、良いボールを上げられたらと思いました」と左サイドからクロスを上げた。これを右サイドバックのDF水戸邊大空(2年)が中に折り返す。「小畑君のクロスに合わせようと思ったら頭を越えたのですが、水戸邊君の折り返しが良かったので、合わせるだけでした」と振り返った、途中出場のFW菅野侑太(1年)がゴールを決め、ついに同点とした。勢いに乗った東北生文大はアディショナルタイム80+2分、右サイドから来たボールを途中出場のFW佐藤駿(3年)がうまく落とし、MF熊谷塁(2年)がゴールを決めて逆転。このまま試合終了し、東北生文大が2-1と劇的勝利を挙げ、4回戦宮城県工業高戦に駒を進めた。
東北生文大川村監督は「ハーフタイムに子どもたち自身が『慌てずにやれば勝てる』と言っていました。いつも気持ちの良い子どもたちなのですが、やってきたことを繰り返し信じてやってくれました」と試合を振り返り、磨き上げてきたサイド攻撃やパスワークを粘り強くやり続けたことを評価した。大会直前主力のDF岩崎陸隼(2年)が骨折するアクシデントに見舞われたが、それでも全員の力で初戦突破。「チームで戦うことを継続し、一つでも多く勝っていきたいです」と小畑主将は上を見据えていた。
一方の多賀城は健闘及ばず敗退。平賀監督は「前半と後半途中まではプラン通りで、どうやって失点ゼロに抑えるかだったのですが、相手の1点目が全てでした」と終盤同点に追いつかれたことを悔やんだ。「前半からボールをもっと握れていれば、足が止まることはありませんでした。ベスト4、8の相手になるとどうしても握ることを怖がる選手もいます」と課題を口にした平賀監督。ピンチを必死に防いでいた松浦も「平賀先生が就任した当時から『握るサッカー』をずっとやってきたのですが、緊張の中ボールを握れず、もっと握れる場面はあったと思います」と、もっとボールを握ることにトライしたかったようだが、「でも、出し切りました。次の世代に頑張ってほしいです」とすがすがしい表情で語った松浦。サッカーの質を追求し、県内の強豪相手にも堂々たる戦いを見せたことを今後につなげていきたい。
(文・写真=小林健志)▽第99回全国高校サッカー選手権宮城予選
第99回全国高校サッカー選手権宮城予選