後半も松山工の勢いは止まらない。58分には元サンフレッツェ広島・愛媛FCなどで活躍したFW大木勉の親類でもあるスーパーサブのMF大木秀仁(2年)が、74分にはエースFW野川稀生(3年)がそろって今大会得点王となる4得点目を奪うなど後半も5得点。計9得点は大会決勝戦史上初の快挙である。

 一方の帝京第五も70分、ゴール前左サイドで得たFKで左SB菊池響太(2年)が素早く横へ流したボールをMF稲邪健巨(2年)の思い切りよくシュートし、意地の1点を返したが、筑波、1年生・志摩奎人のCBコンビを中心とした牙城を崩すまでには至らなかった。

 かくして「新人戦では中予地区予選で敗退するなど0からのスタートだった」(坂本哲也監督)ボトム上体から全国への切符を手に入れた松山工。だが、チームの目線はここではない。現に「失点の部分は課題。全国ではミス1つが命取りになるので、全国までに集中力を高めたい」右SBからの堅実な守備と豊富な運動量で大会MVPにも輝いた主将・兵頭俊昭(3年)は渋い顔を見せれば、不甲斐ないパフォーマンスと自認した野川は試合後、悔しさの涙を流した。

 狙うはまず松山工としては2005年ベスト8などインターハイでは実績を残す一方、選手権では初出場の44回大会以来ない、そして愛媛県勢としても3年間ない「選手権1勝」。最終的にはFW藤本佳希(明治大~J2ファジアーノ岡山入団内定)、DF久保飛翔(慶應義塾大~J2ファジアーノ岡山入団内定)を擁し、2勝をあげた第90回大会で済美があと一歩で涙を呑んだベスト8の先を目指し、彼らは妥協なきトレーニングに励んでいく。

(文・写真 寺下友徳)