尽誠学園ゴール前での両チームの競り合い(写真=寺下友徳)
前半ペースを握ったのは四国学院大香川西。まずは前線へロングボールを供給。そのセカンドボールを拾うと左足の高い技術を持つ河田がサイドへパス。推進力のある山田、菊池の両サイドからのクロスや、竹本のロングスロー。さらに準決勝ではCKを直接ゴールに沈めた河田のセットプレーで何度も尽誠学園ゴールを脅かす。
ただ、この展開は森陽介監督自らがロングスローに見立てたキックを蹴り続け、対策を練っていた尽誠学園にとって「想定内」のもの。「菊池くんのところに入ったら2人でボールを奪いに行く」(GK仁尾谷)守備と「相手はカウンターが得意なので、そこでラインが上がったところを突く」攻撃の狙いはスコアレスで前半35分を終え、後半から中盤に9佐々木裕一郎(2年)、前線に「相手の裏を取ることを得意にしている」11石井蓮士(2年)を投入したことにより、彼らの手ごたえは徐々に確信へと変化していった。
そして迎えた65分。尽誠学園はルーズボールを拾うと相手のDFラインが浅くなっていたところを見計らった仲谷が「練習でもやっていた形」で、浮き球パスをスペースに流し込み。これに反応した石井が飛び出した相手GKを交わしながら無人のゴールへ右足グラウンダーシュート。これが決まると、残る5分余りを全員が身体を張って守った尽誠学園が実に2005年以来、15年ぶりとなる大会制覇を果たした。
2003年度にはインターハイ初出場で1勝。続く2004年度には選手権初出場を遂げながら、その後はなかなか壁を破れなかった青い集団の久々の歓喜。ただ、プレースキッカーとしても攻守に奮闘した辻岡はあえて第1シード濃厚となったインターハイ予選に向けてこう語る「今日は守備はよかったが攻撃は力をだせていない。もっと攻撃の質を高めたいです」
尽誠学園、敗れたとはいえタレントの質は県内屈指の四国学院大香川西。3位決定戦で大手前高松を2-1で破り、躍進以上の自信を今大会で得た進学校・高松。もちろん大手前高松や高松商、藤井学園寒川といった実力校も、このまま終わるはずはない。かくして新人戦を終えて「群雄割拠」の四文字が降臨した香川県の高校サッカーは、コロナ禍の困難の中でもまた進化への一歩を踏み出そうとしている。
(文・写真=寺下友徳)
▽令和2年度香川新人戦(新人選手権大会)
令和2年度香川新人戦(新人選手権大会)