高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ東北は6月30日、延期となっていた第7節尚志とベガルタ仙台ユースの対戦が、尚志高第3グラウンドにて行われた。

　尚志はここまで6試合を終えて5勝1敗の2位。6月26日の第9節は2点のビハインドをアディショナルタイムに追いつき、さらにMF齋藤幹太(3年)の逆転ゴールでここまで無敗だった青森山田セカンド相手に3-2と劇的な勝利を飾るなど勢いに乗っている。一方の仙台ユースは4試合で3分け1敗と勝利が無い。DFラインからのビルドアップは質の高さを見せているが、得点力に課題を抱えている状況だ。

　前半勢いに乗ったのは尚志。仙台ユースMF荒川颯磨(3年)が「前半は相手にロングボールでサイドを変えられて、サイドを押し込まれる時間帯が多かった」と振り返った通り、尚志はダイナミックな展開からサイド攻撃を仕掛けて、決定機をつくった。そして34分左サイドからの前線へのボールを「横に仲間が見えたので、競り合いを頑張ってつなげたら良いと思いました」FW村上力己(3年)が相手DFとの競り合いに勝って折り返した。空いたスペースに走り込んできたのはMF松尾春希(3年)。「力己がうまく折り返してくれて、逆サイドに入ればボールが来るかなと思ったら来ました。ボールを見て打つだけでした」と語る松尾がシュートを決めて尚志が先制し、前半は1-0と勝利リードで終えた。

　しかし後半ペースを握ったのは仙台ユース。DFラインから丁寧にボールをつなぎ、後半開始からボランチに入ったMF熊谷柊治(3年)が時折ドリブルを織り交ぜてリズムをつくり、縦パスやサイドへ散らしたパスで決定機をつくっていった。右サイドハーフの荒川も「真ん中でも時間を使って相手を集めたので、サイドを突破できました」と、積極的に右サイドを駆け上がった。そして74分左サイドバックDF佐々木裕貴(2年)のクロスに飛び込んでいったのは荒川。「左サイドで崩してゴールまで結びつけることができました」と狙い通りの形でのゴールだった。

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　それでも4日前青森山田セカンド相手に劇的勝利を挙げた尚志は粘り強さを見せた。81分コーナーキックのこぼれ球を押し込んだのはFW村上。「『折り返し来い』という思いで待っていたら、折り返しのボールが来て、押し込むだけでした」と振り返ったエースストライカーのゴールで再び仙台ユースを突き放した。その後尚志は連戦の疲れからか複数の選手が足をつる状況となったが、チーム全員で体を張った守りを見せ、何とか仙台ユースの反撃をしのいで試合終了。2-1で尚志が勝利した。

　尚志の仲村浩二監督は開口一番「ベガルタは強かった」とまず相手を讃えた。「選手のパフォーマンスが良くなかった中、粘り強さと言いますか、精神的な部分が良かったと思います。1回点を取られたらズルズル行ってしまうチームでしたが、精神力が上がったと思います」と中3日で非常に厳しいコンディションの中、勝利への執念で体を突き動かした選手たちの頑張りを讃えた。1ゴール1アシストの村上も「いつもよりきつくて、足がつりかけました」と語るが、「高1の時から最後のところで勝ちきれないと言われてきましたが、点を取って勝たせる存在になりたいとずっと思っていました。勝ち越し点を決められて良かったです」と勝負どころでゴールを決められたことを喜んだ。高さ勝負への強さを見せ続けながら、最後足がつる場面もあったU-20日本代表DFチェイス・アンリ(3年)も「今日はきつかったですが、最後の最後まで諦めませんでしたし、切り替えの速さも良くなっています」と今後のリーグ戦やインターハイに向けての手応えを語った。

　一方、仙台ユースは5戦勝ち無し。木谷公亮監督は「先に点を取られて追いかける展開にはしたくなかったです。追いつくところまででパワーを使った感じです」と連戦の疲労もあって、同点にするところまででかなりエネルギーを使ってしまったことを悔やんだ。ゴールを挙げた荒川は「守備は良くなってきているので、攻撃で前線の選手のクオリティが必要です。シュートまで行ける回数も増やしたいです」と自身も含め、フィニッシュの部分を課題に挙げた。しかしながら、DFラインから丁寧にボールをつないで、相手を動かして疲労させることはできており、狙い通り相手のスペースをこじ開けて迫力のある攻撃も繰り出し、対戦相手の仲村監督の称讃もうなずける内容の向上も見せた。木谷監督も「確実にチームも選手も成長していると思いますので、しっかり7月に挽回したいです」と内容の向上を勝利につなげようと意気込んだ。

(文・写真＝小林健志)