前半は興國の永長鷹虎が独壇場も、後半に名願斗哉の2ゴールで履正社が逆転勝利!2試合を残しプリンス関西優勝

2ゴールの活躍でチームを勝利に導いた履正社FW名願斗哉

 高円宮杯 JFA U−18サッカープリンスリーグ2021関西の第17節が11月27日に行われ、勝てば優勝の履正社(大阪)とプレミアプレーオフ進出の為には勝つしかない3位興國(大阪)の一戦は、後半から出場のFW名願斗哉の2ゴールの活躍もあり履正社が2-1で勝利。

 最終節を待たずして履正社が見事にプリンス関西優勝を飾り、プレミアプレーオフに1位で進出を決めた。敗れた興國は3位以下が決定し、プレーオフ進出の可能性が消滅した。

 前節、阪南大高(大阪)との首位攻防戦を3-1で制し優勝に王手をかけた履正社は、前節欠場したエースのFW廣野大河がスターティングメンバーに復帰。対する興國はFW山元蒼太を1トップに起用した。

 試合は序盤から一方的に興國のペース。11分には川崎F内定のMF永長鷹虎がゴール正面のFKを直接狙うも、富山内定のGK平尾駿輝がこれをファインセーブ。16分にも永長が左サイドからドリブル突破を見せシュートを放つも、平尾がストップ。26分には山形内定のMF荒川永遠の突破で得たFKを、永長がゴール左下に狙い澄まして直接狙うも、またしても平尾がセーブ。

 履正社は独壇場の永長をなんとか平尾が止めていたが、それでも永長はさらにその上をいった。40分、ボックス右でボールを持った永長はカットインでDFを剥がすと、クロスボールを入れるモーションからGKの上を越すシュートを選択。平尾も必死に手を伸ばしたものの届かず、ボールは急激に落ちてゴール左上隅に収まった。

 永長のゴラッソが決まり先制に成功した興國が1点リードで前半を終えると、後半に入っても追加点を狙いに行く。右サイドで荒川と永長が起点を作り、次々と興國DF陣に襲い掛かる。しかし、前半シュート0本に抑えられていた履正社も後半から投入された名願のドリブル突破で反撃開始。すると66分、その名願のスルーパスから抜け出した宮路峻輔をファールで止めてしまったDF西川楓人にイエローカード。前半にもイエローを貰っていた西川がこれで退場となってしまう。

 ここから一人多い状況になった履正社が興國を押し込み、サイドチェンジをしながら隙を伺う。72分には宮路がボックス内からフリーでシュートを放つと、79分には左サイドからのクロスにMF川端元がヘディングシュート。そして履正社がゴールまであと一歩に迫っていた81分、廣野のスルーパスでボックス内左に侵入した名願が倒されPKを獲得。これを名願が自ら決めて試合は振り出しに戻る。

【フォトギャラリー】興國 - 履正社

先制ゴールを決めた興國MF永長鷹虎

 この名願の同点ゴールで状況が変わった。未消化試合が1試合あり、2位以上が確定している履正社は無理をして攻める必要がなくなり、逆にプレーオフ進出の為に勝つしかない興國は、一人少ない中で攻めなくてはいけなくなった。

 ボールを持ったら無理をしてでも攻める興國に対し、履正社は数的優位を生かし時間を使う。そしてこのまま試合が終わるかと思われた90+5分、履正社は中央の川端から左でボールを受けた名願がカットインしてシュートを放つと、これがゴール右隅に決まる。この土壇場でGKもノーチャンスの名願のゴラッソが飛び出し、逆転に成功した履正社がそのまま2-1で勝利。残り1試合の2位阪南大高に勝ち点4の差をつけ、履正社が2試合を残し優勝を決めた。

 両チームの背番号11が別次元の活躍をみせた。前半は興國の11番MF永長鷹虎。後半は履正社の11番FW名願斗哉。この二人が前後半でそれぞれ主役を演じた。

 永長は独特なボールコントロールもさることながら、相手が気付いた時には入れ替わっている程、仕掛けからトップスピードに入る時間が短い。そして確実にシュートを枠に飛ばす左足の精度が更に永長の価値を高めている。もう高校生では手が付けられない印象の永長だが、来季から加入する川崎フロンターレでの活躍や、世代別日本代表での活躍にも期待させられる。

 そして前半、「すごいなーと思って見てました」とベンチで永長の姿を見ていた履正社の名願も負けじとドリブルとシュートで魅せた。まだ2年生の名願だが履正社にとってすでに欠かせない武器となっている。名願はフェイントを駆使する訳ではなく、緩急の使い方と抜群の体幹で相手を抜き去る。今までPKを獲得しても先輩に譲っていたが、この日は「今日は決めれる気がしたのでボールを取りに行きました」と本人も気付かないうちに自信も付いてきているようだ。「守備はまだまだ課題」と平野直樹監督は名願に対し注文を忘れないが、来年は間違いなく名願が履正社の攻撃を引っ張っていく事になるだろう。

 名願が来年プレミアリーグWESTを活躍の場に出来るかは、12月10日と12日に広島で開催される高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2021 プレーオフを履正社が勝ち抜けるかにかかっている。安定した守備を軸に1年間首位を走り続け、やっと手にしたプレミアリーグ復帰の絶好機。選手権大阪大会決勝で自らのハンドが阪南大高の先制点に繋がるPKとなってしまい、試合後泣き崩れた名願は既に立ち直った。最後の大会となる3年生たちと名願のプレーオフでの活躍に期待したい。

(文・写真=会田健司)

▽高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ2021 関西
高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ2021 関西