ところが60分、静岡学園(静岡)の猛攻を耐え忍んでいた関東一の守備にわずかなほころびが出た。1点を追いかける展開となり、一矢報いるべく、投入されたのがMFの日下空(3年)だ。「縦への推進力があり、それを信じての起用」(小野監督)だったが、ズバリと的中する。

無念の準々決勝敗退となった静岡学園(写真=矢島公彦)

 関東一の攻撃の生命線は肥田野を軸に、本間凛(2年)、坂井航太(3年)が絡んでいくスピーディーな展開だが、そこにもう1つのピースが加わり、終了間際の劇的同点弾につなげた。左からの日下のクロスに対して、ゴール前に本間と坂井が飛び込み、ファーサイドまで流れてきたボールを坂井が滑りながらゲットした。

 「(静岡学園は確かに強いが)我々が大敗してしまったら、開幕戦からここまで戦ったチームに対して失礼になる。何とか苦しめたいし、焦らせたい。見ている人たちに我々が勝つ可能性を感じてもらいたかった。勝ち上がってきたチームとしての責任をもって、粘り強く戦いたいと思っていた」(小野監督)。

 巨大な壁“シズガク”に立ち向かう関東一の覚悟がPK戦になっても揺らぐことなく、ついに初の準決勝進出を果たした。創部52年の歴史を次々に塗り替えていく関東一の快進撃に目が離せない。

(文=小室功、写真=矢島公彦)

▽第100回全国高校サッカー選手権
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