10月10日、第100回全国高校サッカー選手権大阪予選の4回戦が行われ、大阪朝鮮高級学校vs大冠は後半終了間際の2ゴールで逆転した大冠が3-2で大阪朝鮮高級学校を下した。勝利した大冠は5回戦で東大阪大柏原と対戦する。

　大阪朝鮮高級学校は3回戦からの登場で三国丘に2-2からのPK戦で辛くも勝利して勝ち進んできた。対する大冠は2回戦で大阪学芸に4-0〇、3回戦で日新に6-1〇と順調な勝ち上がりをみせてきた。

　試合は序盤から球際の攻防が激しい戦いになる。すると大阪朝鮮高級学校が先制点を手にする。7分、8番DF金基佑が左サイドのFKから右足でゴールに向かうボールを蹴ると、ゴール前に走り込んだ10番FW韓仁春がこれをスルー。GKはこれに反応できずボールが直接ゴールに吸い込まれた。

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　早めに追い付きたい大冠がここから攻勢に出る。しかし10番MF小西奏汰や7番MF小林慧汰がチャンスを作りだすも得点を奪えずにいると、逆に押されていた大阪朝鮮高級学校に追加点が入る。29分、バイタルエリアで前を向いたFW韓が19番MF柳承勲にスルーパス。MF柳がこれを落ち着いてゴール右に流し込んだ。前半はこのまま大阪朝鮮高級学校が2点リードで終える。

　ハーフタイムに「自分たちでしっかり出来るから落ち着いてまずは1点返そう！」と高田真光監督に送り出された大冠イレブンが"まずは1点"を取りに後半開始から攻め込む。すると46分、右サイドからのFKを相手GKが弾いたところを3番DF河野誠樹が押し込み大冠が1点差に詰め寄る。その後も一方的に押し込む大冠だったが、チャンスはあるものの中々ゴールをこじ開けることが出来ずに試合はそのまま終盤へ。

　時間を使いこのままゲームを終わらせたい大阪朝鮮高級学校に対し、大冠は更に圧力を掛ける。すると79分、大冠がゴールから約25m正面やや左でFKを獲得すると「リーグ戦でもFKを直接決めていたので良いイメージが残っていて、あの位置でコケた(FKを取った)瞬間から狙おうと決めてました。狙い通りに良いコースに行ってよかった」とMF小西の右足から放たれた低くて速いボールがゴール右隅に突き刺さった。

　土壇場で試合を振出しに戻した大冠はそこから更に猛攻を仕掛け、迎えたアディショナルタイム3分、「3年間を出せ！」とベンチから声が飛ぶ中、左CKからMF小西が入れたボールに「3年生とまだサッカーをしたいので2年間の力を振り絞った」という2年生の8番MF山本慎二がファーサイドで頭で合わせてゴール。そしてこれがラストプレーとなりここで試合終了のホイッスル。3-2で大阪朝鮮高級学校を下した大冠が劇的な逆転勝利を収めた。

　勝利した大冠のMF小西は最後のプレーとなったCKの場面を「ベンチから凄い雰囲気が漂ってきて、高田先生からの『3年間を出せ！』という声が聞こえて"ここでミスったらあかん"とめっちゃ緊張したんですけど、相手がゾーン(ディフェンス)だったので速いボールを入れようと意識をして蹴ったらいいボールが行きました」と振り返った。大事な場面でのFKとCKで見事なキックを成功させたメンタルについては「練習ではあまり上手くいかないんですけど、本番だと結構上手くいきます。(持ってるというよりは)運がいいですね」と笑ったMF小西。次戦でも彼のキックが大冠の命運を握るかもしれない。

　大冠の高田監督は「いやー。もう選手のおかげです。ほんとにもう素直にうれしいです」と試合後に声を詰まらせながら安堵の表情を見せた後「立ち上がりにらしくない失点をしてしまって、ゲームプラン的には自分たちのゲーム展開ではなかったんですけど、本当に諦めずに最後まで戦って公立らしく泥臭く、最後までやり抜いたことが最後の逆転弾であり、終了間際のFKに繋がったのかなと思います。オオカンらしくベンチ含め最後の最後まで"心は熱く頭は冷静に"サッカーをしてくれて、本当に選手たちを誇らしく思います」と選手たちを讃えた。

　「前半は大阪朝鮮高校さんのサッカーに付き合ってしまって、自分たちのサッカーが出来ていなかったんですけど、失点してからは我に返って相手の弱点を攻めていこうと。前半0-2というスコアだったので1点取れば流れに乗ると思っていたら、1点取ってその通りになってその後は押し込めたなと思います」と試合展開を振り返った高田監督は次戦に向けて「正直今日は勝てたんですけど、うちとしては堅守をテーマにチームを組んでいるので、そこで2失点してしまったところをしっかり修正して、もっと完成度の高い状態で謙虚に次の試合にも勝ちに行きたいと思います」と2失点を反省し5回戦に臨むとコメント。

　劇的勝利で4回戦を突破した大冠の次戦の相手は東大阪大柏原だ。大阪一部リーグの強豪相手に"オオカンらしさ"のチームワークと堅守でどこまでやれるのか。この試合は注目の一戦になりそうだ。

　(文・写真＝会田健司)