北越が昨季の反省を生かしたPK戦で勝利、新興勢力の上越を破って決勝へ
殊勲の北越GK内田智也(写真=平野貴也)
第100回全国高校サッカー選手権の新潟県大会は、3日に五十公野公園陸上競技場で準決勝を行い、第1試合は、北越がPK戦の末に上越を退け、決勝に駒を進めた。
北越は、過去5回の全国出場を誇る古豪。元々、県内の有望株が集うチームだったが、2015年に荒瀬陽介監督が就任後は、独特のポジショニングとパスワークを見せる技巧派集団のカラーが強い。近年では、2019年の全国高校総体(インターハイ)で優勝候補の一角だった青森山田(青森)をPK戦の末に退けて全国8強入りした躍進が記憶に新しい。
対する上越は、2016年に創部された新興チーム。水戸や大分でプレーした元Jリーガーの藤川祐司監督の下で強化体制を作り、創部4年で新潟県1部リーグに昇格するなど目覚ましい勢いを見せている。選手権での過去最高成績はベスト16だったが、今大会では初めて進出した準々決勝で夏の王者である開志学園JSCを撃破し、ベスト4に駒を進めてきた。
両チームの対戦は、キャリアに勝る北越が優位に立つ展開で進んだ。互いに中盤でパスワークによる打開を狙ったが、中央突破はできず。北越は、後方のビルドアップから大きなサイドチェンジで揺さぶりをかけ、右MF堀野辺空(2年)のドリブルキープと右DF鈴木洸聖(3年)の積極的な攻撃参加、クロスでゴールに迫った。上越は、両足でセットプレーをけるMF望月洸聖(1年)のキックを武器に反撃を狙ったが、前半のシュートは望月のミドルシュート1本に留まった。
後半に入ると、北越の攻撃の連係が向上。ゴール前に押し込む回数が増えてCKを獲得していった。そして後半15分、MF五十嵐暉(3年)が蹴った右CKをDF高橋泰輝(1年)がヘディングで合わせて先制点をもぎ取った。その後も北越のペースで試合が進み、後半30分には途中出場のFW吉田勝己(3年)の惜しいシュートもあったが、追加点は奪えなかった。すると後半33分、上越は、相手のクリアミスで得た左CKのチャンスを生かした。望月が右足で蹴ったインスイングの軌道にニアサイドで右MF杉本大空(3年)が飛び込むと、GKが弾いたこぼれ球をMF家塚成輝(3年)が押し込み、同点弾となった。
試合は80分で決着がつかず、延長戦に突入。北越が堀野辺のドリブル、鈴木のクロス、ファーサイドからFW小林謙心(2年)のカットインシュートとつないでゴールに迫れば、上越も左の家塚から右の杉本、さらにクロスが流れたところを家塚が拾って残し、望月のシュートにつなげるなど、一進一退の攻防を展開。結局、延長戦ではゴールが生まれず、決着はPK戦に委ねられた。
この場面で生きたのは、北越が前回大会で味わった悔しさだった。荒瀬監督は「去年、帝京長岡さんにPK戦で負けて、あの後(相手が)全国でベスト4まで進んだわけですが、あのPKの負けは結構大きくて、実はこの1年間、PKは結構練習してきました。今までは、僕はPKの練習は好きではなくてやっていなかったのですが、去年があって、年間通してやらないとダメだなと言ってやってきたので、選手を見ても(同点に追いつかれてPK戦に持ち込まれて嫌だなという雰囲気ではなく)、よし、練習してきたことが出せるぞという雰囲気だったので、思い切って打とうと話した」と例年にはなかったPK練習を採り入れてきたことを明かした。
PK戦では、先攻で5人全員がキックを成功。相手の1本目をGK内田智也(2年)が止めて、5-3で勝利した。内田は「前日にPK練習があって、GKコーチの中島悠さんから『相手の目を見て跳べ』と言われた。(1本目は)右に跳ぶつもりだったけど、相手の目を見たら、何度も左を見るし、それも最初はフェイクかなと思ったけど、最後にもチラッと一瞬見たので、こっちに思い切り跳ぼうと決めました」と殊勲のセーブを振り返った。昨年の敗戦を前進の糧とした北越が決勝に進出。11月7日にデンカビッグスワンスタジアムで行われる決勝戦では、昨年敗れた相手である帝京長岡と対戦する。借りを返せるか。昨年から進化した姿を見せに行く。
(文・写真=平野貴也)
▽第100回全国高校サッカー選手権新潟予選
第100回全国高校サッカー選手権新潟予選