選手権を知る老将が、安易な変化より徹底を貫く豪腕ぶりで、2年ぶりの選手権へと名乗り

優勝を果たした長崎総科大附(写真=藤原裕久)

 11月14日、トランスコスモススタジアム長崎で第100回全国高校サッカー選手権長崎予選決勝が開催され、2年ぶり8回目の優勝を目指す長崎総科大附が、2年連続2度目の優勝を目指した創成館を破り、全国への切符をつかみ取った。

 1年前と同カードとなった決勝戦は、互いに長いボールを打ち合う乱打戦で始まった。素早いボールへの寄せとハードワークを徹底する長崎総大附属は、左サイドから西岡紫音と石山風吹を中心とした攻撃で攻め込んでいくが、創成館もGK永田健人が奮闘し、容易に得点を許さない。セカンドボールを奪って攻め込む長崎総大附属ペースで試合は続くが、数こそ少ないながらも村田颯を起点に攻撃を組み立てる創成館も善戦し、前半を0-0で折り返す。

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創成館 vs 長崎総科大附(写真=藤原裕久)

 後半に入ってもサイド攻撃を起点に攻める長崎総大附属だが、「監督から、クロスはファーサイドを狙ってくると言われていた(西元準也)」という創成館DFも落ち着いた対応を披露。クロスを上げさせても決定的なシーンを作らせずに0-0のままゲームは続く。だが、左サイドからのクロスを徹底し続ける長崎総大附属は、後半50分に左サイドから芦高佑が送ったクロスを「絶対にくると思っていた」という高良陸斗が先制ゴール。粘る創成館から遂に得点を奪い取ることに成功する。

 1点を追う創成館は、市場雄士をターゲットにした攻撃から速攻を狙うが、長崎総大附属は落ち着いてボールを動かして対処しながら、速攻で追加点を狙っていく。後半63分に田中凌雅、72分に堀口昴を投入して攻撃のテコ入れを狙っていく創成館は、終盤にチャンスシーンを作っていくが、児玉勇翔と原口玖星の守る中央を突破しきれず。逆に終了間際に、途中出場していた牧田陽太のシュートの跳ね返りを西岡が押し込んで追加点。そのまま試合を2-0で終了し、長崎総大附属が1年前の決勝戦で敗れた借りを返すことに成功した。

 素早い攻守の切り替えと、セカンドボールの回収、サイドを徹底的に突く小嶺サッカーは今大会の決勝戦でも存分に威力を発揮した。それはポゼッションやカウンターといったトレンドの中でも小嶺監督が磨き続けたサッカーであり、決勝戦でもそれを徹底できたことが勝因だった。

 「もう一度必ず選手権に行く」を合言葉に、2年連続での出場を目指した創成館の守備は固かった。この試合でもGK永田の安定感は高く、前半に一度だけ永田がミスをしたシーンでも周囲でカバーするだけの組織力も持っていた。夏場の不調を思えば、よくぞここまで仕上げたと呼べるほどである。決勝戦でも強固な守備は存分に見せていたし、特にサイドからのクロス対応にはかなりの強さを見せていた。そこでもしも長崎総大附属がサイドからのクロスを諦めていれば、決勝点は生まれなかったかもしれない。それでも長崎総大附属はサイドからのクロスを徹底し、ついに創成館ゴールをこじ開けた。

 「やりたいサッカーはできていたし、失点するまでチャンスも作っていた。でも失点して相手ペースになってしまった」

 試合後、創成館の守備を支えた西元はそう振り返った。安易な変化より、徹底を貫いた1点が勝機を一気にたぐり寄せたと言えるだろう。

 「小嶺のサッカーじゃ全国では勝てない」という声を聞くこともあるんですが、そういうことは言わしておけば良いんですよ。僕は全国に100回以上出場して10回以上全国優勝をした。同じ結果を出してから言いなさいと。でもね、そんなに簡単なものじゃないんですよ。(過去の)歴史をたくさん知って、やっと答えが出るものなんですよ」

 試合後に2年ぶりとなる選手権出場を達成した長崎総大附属の小嶺忠敏監督は、そう語った。記念すべき第100回の選手権へ、誰よりも選手権を知る老将が、安易な変化より徹底を貫く豪腕ぶりで、2年ぶりの選手権へと名乗りをあげた。

(文・写真=藤原裕久)

▽第100回全国高校サッカー選手権長崎予選
第100回全国高校サッカー選手権長崎予選