昌平は8強進出を逃す

 出鼻を挫かれる一発に不安が過ったものの、前橋育英は持ち前のパスワークと素早い攻守の切り替えで主導権を掌握する。中盤の攻防で相手を上回ると、13分にFW山本颯太(3年)がFW小池直矢(3年)とのワンツーでPA内に侵入。狭いエリアを打開すると、冷静にゴールを決めて同点に追い付いた。

 以降も主導権を相手に渡さない。とりわけ、素晴らしかったのが、徳永涼とボランチでコンビを組んだMF根津元輝(3年)だ。昨季からレギュラーを務めるなど才能を高く評価されていたが、今季は開幕前に右膝の後十字靭帯を損傷し、コンディションと相談しながらの出場が続いていた。その間に選手が台頭。8月のインターハイ後に復帰しても戻る場所がないほどチームの選手層が厚くなっていた。そうした状況下で右SBにも挑戦するなど、更なる成長を求めてプレーを続けてきた中で再び古傷を痛めてしまう。その影響で初戦は58分で交代となり、続く2試合目は「根津は3回戦のために休ませた。コンディションを上げてベストな状態にしてほしい」という山田耕介監督の計らいで休養し、この大一番に標準を合わせてきた。すると、徳永とのコンビで本職のボランチで躍動。強度の高い守備でタレント揃いの昌平攻撃陣を封じ、攻撃でも起点となるパスを前線に供給して存在感を示す。30分には接触プレーで傷んでしまうが、なんとか立ち上がってプレーを続行。その後も安定したパフォーマンスでチームを牽引する。

 後半に入ってもチームはペースを落とさず、相手を飲み込んでいく。50分に山本が右サイドから折り返すと、MF青柳龍次郎(3年)が走り込んで逆転弾を決めた。最後まで走り続け、昌平を圧倒。前橋育英は最初の山を乗り越え、準々決勝進出を決めた。次は大津とのU-18高円宮杯プレミアリーグ勢対決となる。昨年度の選手権では同じく準々決勝で対戦して0-1で敗れた相手にリベンジできるか注目だ。

(文・写真=松尾祐希)

▽第101回全国高校サッカー選手権
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