試合の前半は両校ともに過大なリスクを背負わない40分となった。その中で尽誠学園はサイドMFとFWのポジションを適宜入れ替えながら相手サイドバック裏のスペースに入り込み、そこから精度の高い10古家の左足セットプレーなどでゴールを狙うと、対する藤井学園寒川も両足のキックと「導線を作る」ドリブルを併せ持つ7伊藤を経由したパスワークや、3稲谷のロングスローなどで対抗したが、両校守備網の堅さで得点は生まれず。

 しかし、前半の終盤になると藤井学園寒川が過去、2014・2022年の2度に渡り全日本U-18フットサル選手権大会ベスト4入りした実績も持つ足下のテクニックと「堅守強攻」をチームスローガンに掲げるスピードに乗ったカウンターで主導権を握る展開に。33、34分の決定機こそ逃し前半はスコアレスで折り返したが、後半に入り迎えた43分、自陣から7伊藤が蹴ったFKのこぼれ球を受けた3稲田の折り返しを抜け目なく待っていたのは「FKの時点で裏のスペースを狙っていた」11田北。フリーの状態で放った右足スライディングシュートがネットを揺らし、先制点は藤井学園寒川に生まれた。が、尽誠学園もビハインドを覆す準備は十分だった。50分にDF5湊斐可琉(3年)を投入し、10古家をボランチに入れる3-5-2にフォーメーションをチェンジすると、60分過ぎからは右からは5湊、左からは23石田がロングスローを入れるパワープレー。62分には23石田のシュートがバー、71分には22石川のシュートが左ポストを叩くなど終盤の猛攻は見事の一語であった。   

 それでも「四国プリンスの経験を通じ、選手たちで課題を出し合えるようになった」(キャプテン伊藤)藤井学園寒川は、最後の一線は許さず。結局、虎の子の1点を守り切った藤井学園寒川は、創部40年目にして初となる悲願の選手権出場を香川県大会3試合クリーンシートで成し遂げた。

 試合後、喜びを爆発させる選手たちとスタンドを観ながら「いい景色ですね」と目を細めたのは就任15年目を迎える藤井学園寒川・岡田 勝監督。近年は四国内で隠れた強豪であり続けながら、11人制での全国大会出場がどうしてもつかめなかった彼らは、ついに壁を破った勢いと「新チーム立ち上げ時にチームで日本一を掲げた」高い志を実現させる強い意思で、選手権初出場初優勝を本気で狙っていく。     

(文・写真=編集部)

▽第103回全国高校サッカー選手権香川予選
第103回全国高校サッカー選手権香川予選