リードを奪った長崎総科大附。その後は嶋中春児、田中純平のCBが一層集中力を高め、強度の高い守りで相手に付け入る隙を与えない。終盤まで身体を寄せきり、このまま逃げ切りを目論んだ。しかし、そう簡単にいかないのが総体の難しさである。

 幾度も逆境を跳ね返して来た流通経済大柏は同28分。「大会中から状態が良かった」と本田裕一郎監督が期待を掛けていた加藤蓮がドリブルで仕掛けると、PKを獲得する。千載一遇の大チャンスを宮本優太がきっちりとモノにし、追い付くことに成功。これで一気に勢いを増した流通経済大柏は更なる攻勢を仕掛けるべく、最前線に熊澤和希を投入し、一気呵成の反撃を試みる。普段はボランチ出来ようされることが多い熊澤も期待に応えようと、身体を張ったプレーでゴールをこじ開けにかかった。すると、同34分。GK薄井覇斗のロングフィードを近藤潤が頭で落すと、熊澤がゴール前のやや左で受ける。「打てば入る気がした」と言う背番号14は、相手GKのポジショニングがずれているところを見逃さなかった。右足でネットを揺らすと、土壇場で流通経済大柏が試合をひっくり返すことに成功。このリードを最後まで守り抜いた流通経済大柏が4強入りを決めた。

 

(文・写真 松尾祐希)