迎えた後半開始早々、1分も経たずして帝京は同点に追いつく。MF長倉昂哉、DF鈴木啓太郎がゴール前で粘りを見せ、最後はMF桑島健太。こぼれ球にいち早く反応し同点弾。この電光石火の一発がこの後繰り広げられる“乱打戦”の口火を切る形になった。

 1対1のスコアも僅か2分後には変動。追いつかれた東京朝鮮中高級学校は43分、先制ゴールのFWリャンヒョンジュが左サイドを突破しクロス。ニアサイド潰れたところ、ファーサイドでFWリフィドンが押し込みすぐに勝ち越しゴール。2対1、東京朝鮮中高級学校がリードを奪い返す。

 再びビハンドの帝京はFW中瀬大夢、MF大庭健人を立て続けに投入。攻撃の中核を担うMF長倉昂哉と、MF桑島健太はポジションを一つずつ押上げ、2トップを形成。より一層攻撃のアクセルを踏み込むと、ベンチの采配はすぐに功を奏す。62分、高い位置でボールを奪ったMF仁科虎生が前述の2人とのワンツーから最後はゴール前中央、左足一閃。ゴール右隅へと決めてチームメイトからは手荒い祝福。さらに、73分には左サイドのグランダークロスからMF浅見颯人がニアサイドで合わせ一気に逆転ゴール。試合をひっくり返し、帝京が勝利をぐっと引き寄せた。

 しかし、このまま終わらないのが激闘たるゆえん。帝京の歓喜も束の間、78分には東京朝鮮中高級学校FWリャンヒョンジュがフィニッシュ。右サイドから供給されたアーリークロスに鮮やかなジャンピングボレー。右足でしっかりとミートされたボールは、負傷のGK渡辺聖也に代わって途中出場となったGK岩崎波瑠の左手をかすめ、ゴールネットを揺らした。

 3対3、セミファイナル進出を巡る攻防は80分間で決着がつかず、延長戦へと突入。両チームが一喜一憂を繰り返した一戦、終止符を打ったのはやはりこの男であった。東京朝鮮中高級学校FWリャンヒョンジュ。延長前半5分、MFキムソンホの後方からのアーリークロスに巧みな胸トラップでゴール前抜け出すと、右足でゴール。ハットトリック達成の一撃は、値千金の決勝ゴールとなった。さらにその1分後には、動揺を隠しきれない帝京を尻目にMFチェギョンホがダメ押しの5点目を奪い勝負あり。

 2度追いつき、一時は逆転劇を演じた帝京は最後までビハインドに立ち向かうも、MF桑島健太の直接FKはポストに嫌われるなどあと一歩及ばず。ノーガードの打ち合いは延長戦の末、東京朝鮮中高級学校に軍配が上がる結果となった。

(取材・文=金子 侑史)

▽大会日程・結果
2015年 高校サッカー総体(インターハイ)東京都