明秀日立の左・大塚GKコーチ、中・伊藤コーチ、右・萬場監督(写真=会田健司)

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 8月4日、令和5年度全国高校サッカーインターハイ(総体)の決勝が花咲スポーツ公園陸上競技場で行われ、桐光学園(神奈川1)と対戦した明秀日立(茨城)が2-2からのPK戦の末に勝利を収め、初優勝を果たした。

 今大会、明秀日立の指揮を実質的に執っていたのは、萬場努監督の教え子でもある伊藤真輝コーチだ。

 今年、監督16年目を迎える萬場監督が就任後に初めてスカウトして集めたメンバーで、萬場チルドレン一期生の伊藤コーチ。その伊藤コーチは現役時代、明秀日立で自身の代ではキャプテンも務めた。そして大学を経て母校に戻ってきてコーチとなり、ここまで萬場監督や大塚義典GKコーチらスタッフ陣と共にチームを支えてきた。その伊藤コーチに決勝戦の後に話を聞いた。

ーー日本一になった今の率直な心境は?

 実感はほとんどなく、ただただ疲れました(笑)。今回このタイミングで日本一になれたという事は間違いなく選手たちの努力が実ったのだと感じています。ただ大会前には中央学院(千葉)さんと練習試合をやった時にボコボコにされたりと、課題はまだまだあるので、今日の試合前にも「今日勝っても負けてもまだまだ課題があるから持って帰ってもっと強くなろう」と言っていました。それでもひとつ目標が達成できたのは本当に良かったと思います。

選手たちに胴上げされる伊藤コーチ(写真=会田健司)

ーー選手たちに胴上げされていましたが?

 県大会のときも優勝が久しぶりだったので、選手たちに胴上げしてもらって本当に嬉しいなという思いです。そして萬場監督からゲームコントロールを任せていただいたところも本当に感謝していて、僕自身もチームとしても「挑戦」というスローガンを掲げていて、我々も挑戦しようということで、僕もいつかはチームを率いたいと思っているのでこうやってトライさせていただいた。選手の頑張りもそうですけど、監督の心意気には本当に感謝しています。

ーー伊藤さんが明秀日立のコーチになったきっかけは?

 僕が明秀日立のOBなので。東京の大学にサッカーで進学して、就職活動をしているときに、所帯がだんだん大きくなってきていたので、監督から「是非戻ってきて指導者をやってくれないか?」というような声をかけてもらって、僕もチャレンジしたいと思ったので、教員免許を取得して教員という形で帰ってきて、っていうのが大卒からのスタートになりました。

ーー選手時代も萬場監督に指導を受けていたんですね?

 萬場監督が赴任した一年目のときに僕が中学3年生で、初めてスカウトして取ってもらった。最後はチームのキャプテンも務めさせてもらって、かなり厳しく指導されながらも一生懸命に二人三脚したような思いがあるので、いつかそうやって別の立場で頑張りたいという思いはある中で帰ってきたので喜びも大きいです。

ーー伊藤さんが現役の時のチームと今のチームの違いはどんなところですか?

 学校自体も大きく変わったなと思いますし、選手の質も大きく向上したなという風に感じていますけど、卒業生という立場で僕らは僕らなりに頑張って伝統を築いた自負もありますし、GKコーチの大塚も僕より上のOBなんですが、なかなか結果が出なかった頃からですけど、先輩たちが繋いできた結果があって、だんだんそういう伝統ができて、今の選手たちの質も上がってきたのかなという風に感じています。

伊藤コーチとリフティングをする萬場監督(写真=会田健司)

ーー決勝戦の試合前でも萬場監督とリフティングを仲良くやっていたのが印象的だったのですが?

 いつも練習のときも同じような感じでやっていて、生徒たちにもいつも通りやることが大事だって言っているので、あれはもう日常的な光景で、僕からするとあまり違和感はないかなという感じです。

ーー萬場監督は我々にもいつも笑顔で接してくれていますが、伊藤さんから見た萬場監督とは?

 まず、本大会で一番氷をスクイズボトルに詰めた監督は間違いなく萬場監督です(笑)。朝も5時半から選手のおにぎりを買ってきたり、監督だと思えないぐらい色んな雑務もやってくれています。今こうして僕が生徒の練習を見て、表に立たせてもらっていますが、裏方で選手に見えない努力・気配りというところがある。きっと選手らはそこまで感じていないと思うのですが、僕はそういう風な努力をしてもらっている中で前に立たせてもらったので、本当に感謝しているしリスペクトがすごく大きいです。

ーー今のようにチームを任せてもらえるようになったきっかけは?

 今から4-5年前に初めて新人戦を任されたんですが、その2-3か月前に「チャレンジしてみろ!」と言われて。そのときは僕自身コントロールする力も全くなかったので、監督からボロボロに厳しく言われて。実際に試合で劣勢に立った時にもコーチングができなくて、「何もしないなら帰れ!」と言われたこともありました。僕自身苦しい時期もありましたが、そういう経験を色々させてもらって、だんだん少しずつ力を付けられてきたなという風に感じているので、もう本当に監督には感謝しかないです。

ーーこれからプレッシャーも大きくなると思いますが、今後のチームの方向性はどう考えていますか?

 この夏で自信になったものはより頑張っていきたいと思っていますし、選手たちのここ数日の雰囲気を見ても間違いなく成長している。一方で、ちゃんと足元も見れていて「まだできないことはできないな」と理解してくれているようなので、これから帰ってまたすぐに練習試合やフェスティバルもあるので、コンディションに気を付けながら頑張ってもっと成長していきたい。選手権もそうなんですが、チームの底上げを考えるとリーグ戦でちゃんと勝ち上がって、プリンスの参入戦に入って、そこを勝ち切って選手権に臨んでいきたいと考えています。

 (文・写真=会田健司)

▽令和5年度全国高校サッカーインターハイ(総体)
令和5年度全国高校サッカーインターハイ(総体)