桐蔭学園 vs 桐光学園(写真=佐藤亮太)

 また劣勢に立たされながらもチャンスを作れたのはボランチMF6佐野の存在があった。

 「相手が勢いよくくるのはわかっていた。自分はボールをキープしたり、いなすことができる。なので慌てなければボールは取られないので自信を持ってプレーしていた」と佐野。

 細かいフェイントで相手を惑わせ、メリハリのあるプレーで味方に落ち着かせ、裏へのパスで相手を崩した。その佐野について八城監督は「賢く頭で勝負するタイプの選手でコミュニケーション力が高い」と評価。まさに特長が出ていた。

 そして決勝点となったCK。八城監督曰く、セットプレーは練習で力を入れているわけではないそうで、「めったにははいらないので珍しい」「いつもセットプレーで取られているので驚いている」とのこと。「セットプレーからのゴールは今シーズン、初めてかもしれない」と振り返った、アシストのMF6佐野は「祐太郎(MF8山本)と目が合って、信じて入ったら、良いボールが来たので合わせた。GKが触ってしまったが、最後、渚音(DF25初見)が詰めてくれてよかった」と会心の笑みを浮かべた。

 これまで桐蔭は良い試合、良いチャンスがありながら勝ちきれない試合が多かった。

 「ずっとマークにつかれていてやりづらかった」と攻守の要MF10谷琉真は、ここ数試合の反省を踏まえ「まずはゼロで抑えて点を取るというのが自分たちの流れ。きょうはセットプレーで取れて、ゼロで抑えられた」と喜んだ。

 きょうのように劣勢でありながら決めるべきときに決めることができた。だからこそ「勝つとはこういうこと」(八城監督)という言葉は意味深い。

 実は桐蔭、ケガや体調不良、受験などの理由でじゅうぶんなメンバーが組めなかった。そのなかの完封勝利はより価値あるものとなった。

 「全部員がしっかりトレーニングを積んでくれたから」と話した八城監督は試合後、疲労困憊のイレブンに「見ていて楽しかった。いいゲームだった」とねぎらい、称えた、その姿が印象的だった。

(文・写真=佐藤亮太)

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