正智深谷 vs 浦和南

ドラマチックな幕切れ!正智深谷が激闘を制し2年連続V!

「ここに懸けてきた」
「ここは、通過点」
言葉の綾かもしれないが、試合後の指揮官が語ったこの試合への思いが、ほんの僅かの、しかし大きな勝敗の違いを生む差につながった。そんな試合だった。

 2016年の高校サッカー選手権埼玉県大会決勝は、前年度のチャンピオンで埼玉県代表として全国の舞台に立った正智深谷と、11年ぶりの決勝進出に燃える「赤き血」の継承者・浦和南の顔合わせとなった。

試合は序盤、浦和南がその破壊力を見せつけようと攻勢に出る。「あの破壊力は大きな脅威」と正智深谷・小島監督も警戒する空中戦を展開。シンプルに前へと放り込み制空権を取り、ゴールに迫る。だが正智深谷も今大会ここまで無失点という守備の堅さを発揮。全員で体を張りゴールを許さない。浦和南・野崎監督が「ウチの攻撃なら破壊できると思っていた。前半最初に(点を)取れれば良かったんだけど」と悔やんだように、この攻勢を凌いだことで正智深谷が逆に落ち着きを見せはじめ、徐々にペースをつかんでいく。突破力のあるサイドを使い幾度となくゴールに迫る正智深谷。だが、浦和南の強い守備に跳ね返され得点には至らず。前半をスコアレスで折り返す。

 後半に入り両チームややリズムがつかめない中の47分、正智深谷は田島帆貴を投入。「いつもどおりお前の仕事をしてこい」と送り込まれたスーパーサブは、この試合もその威力を発揮。ややサイド攻撃一辺倒だった正智深谷の攻撃が、田島が中央でボールをコントロールすることで厚みを増していく。
そして52分、田島がペナルティエリアへ侵入した新井晴樹にスルーパスを送る。新井が放ったシュートはバウンドをしてGKのタイミングを狂わせゴールネットを揺らし、正智深谷が先制に成功する。
その後もすっかり勢いに乗った正智深谷がペースを握り攻撃を続ける。しかし、得点を許さない浦和南。何とか防戦一方の状況を打開しようとベンチが動く。63分には仁平大輔、76分髙橋亜聡、77分には山口翔大を投入。すると、この選手たちが仕事を果たす。
パワープレーにも乱れなかった正智深谷の統制されたラインを髙橋亜聡がスピード感と気迫たっぷりのドリブルで切り裂きかき回す。CKや正智深谷サイドでのスローインが増えてくると、試合終了間際だった。山口の右サイドからのロングスローに、ゴール前中央の仁平が頭で合わせ、見事同点に。試合はそのまま延長戦に突入。しかしその延長戦でも決着はつかず、PK戦へともつれ込むこととなった。

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