共に連戦の疲れを抱えた中で迎えた準決勝だったが、序盤からアグレッシブなゲームを展開しかけたのは4−3−3のシステムで挑む関東一だった。インサイドハーフに入るMF冨山大輔とMF道顕翼がドリブルやパスを多用し、アタッキングサードへと侵入。サイドに展開しながら、最前線のFW岡崎仁太朗がゴール前で存在感を見せるなど攻勢を強めた。前半20分には岡崎が左サイドを抜け出して決定機。これは市立船橋DF杉岡大暉が阻止し、シュートを打たせない。同22分には道顕がドリブル突破から左足を振り抜くもバーの上。関東一は得点こそ奪えなかったが、攻撃の形に手応えをつかんでいたことは間違いなかった。

 一方の市立船橋は、「相手がリスペクトしてきて中を閉じて来た」と朝岡隆蔵監督が振り返ったように、なかなかPA内で入り込むことができない。『イチフナの懐刀』といっても過言ではないFW永藤歩のスピードも、裏のスペースを消されてしまい効果は半減。流れをつかむべく中盤で試合を組み立てにいくが、これもうまくいかず劣勢を強いられた。それでも、苦しい時に得点を奪えるのが名門校と呼ばれる所以。同30分、左サイドを強引に突破した永藤が左サイドから折り返し、FW高宇洋が中央でシュートを放つ。GK円谷亮介がセーブするも、最後はMF工藤友暉が押し込み待望の先制点を奪ってみせた。

 これで勢いに乗るかと思われた市立船橋だったが、直後の同32分。冨山のパスを受けた岡崎に一瞬の隙を付かれてしまい失点。試合を振り出しに戻され、流れをつかみ切れない。前半終了間際には、エースの永藤が負傷。後半の頭からピッチを去ることを余儀なくされた。今大会最大の劣勢に追い込まれた市立船橋は後半の頭から右サイドハーフに入っていたFW矢村健を最前線に配置。フィジカルの強さに特徴を持ったアタッカーに攻撃を託した。

 「永藤が怪我をしなければ、前半で交代をさせようと思っていた」と朝岡監督と話すように前半の矢村はプレーに精彩を欠いていたが、1トップに入るとらしさが復活。前線でのハードワークでチームに流れを呼び寄せる。後半22分には、古屋のロングフィードを受けると相手DF2人囲まれながら、ゴール前に侵入。右から相手に寄せられたが、諸共せず強烈な左足でネットを揺らしてみせた。結果としてこの得点が決勝弾。矢村の活躍で市立船橋が苦しみながら決勝戦へ進出を決めた。 

(取材・文・写真 松尾祐希)