現時点でのFW染野のプロモーション映像をまとめるとしたら、外せないゴールばかりだ。

 第98回大会の出場権をかけた県決勝では(2019年11月17日)、チームを全国に導く貴重な1点をマークしている。そのシュートもまた“らしさ”満載だった。得も言われぬ軌道を描きながらゴールの枠内へ吸い込まれていく。相手選手にとって抗う術がなかった。

 ゴールシーンを少しプレイバックしてみよう。

 右サイドからのロビングに対し、相手GKとDF、味方の3人が重なるような形になり、そのこぼれた球を左足で止めて、素早く左足でふわりと浮かせた。ボールを受けた位置はゴール正面やや左側で、ペナルティーエリアのライン上辺り。味方につないで、攻撃をやり直してもいいような状況だった。

ところが、染野はシュートを選択する。その瞬時の判断にまず驚かされるし、そこにシュートコースを見出した着眼点にもうなるばかりである。

 当然のように“全国”での活躍が期待されたが、その後、腰椎分離症によって戦線離脱を余儀なくされてしまう。本大会の選手登録を外れたため、ピッチに立つことはなかった。チームは初戦の徳島市立(徳島)に0-0からPK戦の末、無念の敗退。染野の高校サッカーはここで幕を閉じた。

「ずっと試合に出るのが当たり前だったけれど、チームメイトをサポートする側に回っていろいろ気づくこともあった。自分にとっては大事な時間になった」と、前向きに受け止めている。

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