開幕が迫る第93回全国高校サッカー選手権大会。冬の風物詩の到来を前に富山県代表富山第一が初の日本一に輝いた前回大会の激闘を振り返る。

■“国立最蹴章”にふさわしいドラマチックな決勝戦
 4万8295人の大観衆が詰めかけた最後の国立決戦。富山県代表富山第一と石川県代表星稜、初の日本一を目指す両雄による史上初の北陸勢ファイナルは永遠に語り継がれるであろう好勝負となった。5試合で13得点を挙げた「攻」の富山第一と、準決勝まで無失点を継続、2度のPK戦を制して駒を進めた「守」の星稜。攻守の構図がくっきりと映し出された決勝は序盤から緊迫した展開となる。均衡が破られたのは0対0で迎えた前半34分、星稜はMF寺村介のPKで先制に成功すると、さらに後半に入りカウンターからFW森山泰希が決めて追加点奪取。理想的な試合運びで星稜が全国制覇を手繰り寄せる。

 星稜2点リードで試合は大詰め、誰もが通算24度目の全国出場を誇る名門の優勝を確信し始めた試合時間残り5分、最後の国立に奇跡が起こる。2点のビハインドを背負いながらも懸命なプレーを続ける富山第一は後半41分、MF高浪奨のゴールで1点を返すと迎えた後半アディショナルタイムのラストワンプレー、大会を通じて積極的な攻撃参加が目立ったDF竹澤昂樹がPKを獲得。窮地に追い込まれていた富山第一に千載一遇のチャンスが訪れると、キッカーFW大塚翔の右足から放たれたシュートは見事にネットを揺らし土壇場で試合を振り出しに戻した。

 歓喜に酔いしれる富山第一と悪夢にうつむく星稜。試合は2対2のまま延長戦に突入すると“国立最蹴章”のドラマは続いた。互いに試合を決めきれずこのままPK戦突入かと思われた延長後半9分、富山第一MF村井和樹の左足から放たれたシュートが星稜のゴールネットを揺らす。一瞬の静寂の後に沸きあがる観声、富山第一が劇的な逆転勝利で初の日本一に輝いた。

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