「クマ(熊倉)が守っているゴールから点を取りたい」と、その胸中を素直に打ち明けていた安斎。1-1の同点で迎えた63分に逆転弾を決め、通算５得点で大会得点王に躍り出た。だが、試合はこれで終わらなかった。

　PK戦は心理戦といった側面がある。ゴール前に威風堂々と構えるGK熊倉は、自分の間合いに引き込むようなオーラを発していた。青森山田の4人目のキッカーがゴールの枠を外し、かたや山梨学院は4人全員が決め、5人目のキッカーを待たずに勝負が決する。

「日本一になるために頑張ってきたので、報われた。これまで支えてくれた人たちに恩返しができた」と、11年ぶり二度目の選手権制覇の立役者であるGK熊倉は会心の笑顔を見せていた。

(文＝小室功)