矢板中央 髙橋健二監督(写真=松尾祐希)
※取材は栃木県の緊急事態宣言解除前に電話にて実施。
新型コロナウイルスの感染拡大により、緊急事態宣言が発出されて約1ヶ月半。ほとんどのサッカー部、Jクラブのアカデミー、街クラブは学校の休校処置に伴い、活動を自粛している。U-18高円宮杯プレミアリーグを始めとする各地域や都道府県のリーグは開幕延期となり、夏のインターハイも中止となった。その中で子供たちは再開を信じて自宅で日々を過ごしている。
そうした状況に選手たちは目標を見失ったとしても不思議ではない。特に最終学年の生徒たちは進路の不安を抱えている。しかし、現状に悲観し、下を向いても何も始まらない。もっと先の未来を見据えて、すべきことは何なのか。昨冬の高校サッカー選手権でベスト4に進出した矢板中央の髙橋健二監督に話を伺った。
ーー現状を教えてください。
国から一斉休校の要望が出された2月の下旬から学校に通えていません。そこから全体練習は中断となりました。寮生で東京など感染が進んでいる地域から来ている生徒もいたので、帰省の判断について私から文書を親御さんに出しました。現在は寮に残っている生徒と地元生で自主的に身体を動かしています。活動する際は必ず検温を実施し、体調の確認を徹底していて、問題があれば、必ず病院に行く規則を設けています。現在、生徒たちに言っている注意事項は不要な外出を控えることです。
必ず密集、密室を回避する。そして、手洗いうがいの徹底も求めています。もちろん人とのコンタクトは少なからずありますが、そこは心掛けるしかありません。ただ、現在の状況から精神的に落ち込んで違う疾病が出てくるといけないので、僕らも子供たちのメンタル面を注視しています。なので、国家資格を持った公認心理師に今年からチームに来ていただいているんです。メンタルアドバイザーの役割を担っていただき、まずは指導者に対し、選手にどうやってポジティブな話をするのかについてミーティングをしました。インターハイが中止になるなど今後の道筋が立てづらいので、選手たちにどうやって目標を落とし込むかを話してもらったんです。
ーー確かに今はネガティブな話題ばかりで、指導者も選手とどう向き合うのかなかなか難しいですよね。
ネガティブな情報が各方面から入ってくるので、チームとして目標がなくなりますし、選手たちはモチベーションを維持しにくいはずです。今後は学校に残っている子供たちに対し、公認心理師から話を頂くつもりでいます。いかに精神力を保ちながら、新たな目標設定をした上で取り組めるか。これは矢板中央が今まで取り組んでいた“最後まで諦めないサッカー”、“人に感動を与えるサッカー”、“粘り強いサッカー“にも繋がっていきます。このような状況だからこそ、危機感を持って、公認心理師を通じてメンタル面も育んでいきたいんです。今はとにかく感染しない、させない。予防に務めながら、彼らを前向きにさせたいと考えています。