矢板中央サッカー部(写真=松尾祐希)

ーー矢板中央は寮生活の子供が7割で集団生活をしています。指導される側もかなり気を使われますよね。

本当に大変ですね。必ず寮には検温機を置いて、寮監には体調をしっかり把握させています。また、感染が流行している地域から来ている生徒に関しては、保護者と連携ながら帰省の判断をしています。実家に帰る場合にも注意点を設けていて、人混みが多い公共交通機関は利用せず、必ず保護者が車で迎えにきて三密を避けることを条件にしています。ただ、帰省している子供たちがどのように過ごしているかを把握できないので気になりますよね。まだ実践はできていませんが、今後はテレビ電話を使い、自宅でどういう風に過ごしているかを確認した上で、1対1の面談や室内でできる筋力トレーニングメニューを提示していきたいと考えています。

ーー検温の機器は以前から個数の確保に困っているとお話しされていましたが、その問題点もクリアになったのでしょうか?

遠赤外線の検温機を5台購入できました。あとはチームドクターと連携を取って、問診票を書いてもらうようにしています。1年生の入学は4月の頭。つまり休校期間中だったんです。なので、感染が多い地域から来ている生徒も多く、入寮の時点で保護者に問診票を書いて頂きました。内容は名前と住所、出身地、連絡先、症状、発熱、咽頭痛、倦怠感、息苦しさの有無。あとは今までの病歴、渡航歴、春休み中の行動も記してもらいました。現在は寮生だけに行なっていますが、今後は通学者にも実施する予定です。さらに今後はノートに体調の個人記録を作成させます。すでにコーチ陣にはやってもらっています。もし、異常や発熱した場合は矢板市内にいるチームドクターに連絡をして、すぐに対応できる状態を取っています。

ーーこのようなご時世ですが、成長期でもあるので、ある程度は身体を動かさないといけないですよね。

そうなんです。今、子供たちは本当に不安の中で生活をしています。なので、我々は選手たちに明確な感染防止の指針を出し、対応することが重要です。そうした取り組みをしつつ、精神的なケアが重要になります。子供たちは目標をなくし、モチベーションを失ってしまいがちです。遠征や公式戦がなくなり、今までとは違う状況になっています。コーチ陣も含めて、目標設定についてしっかり話をする。必ずこの感染症が収まると信じ、高校3年間だけではなく、仮に今年の大会が全てできなくなったとしても、卒業がゴール地点ではないからです。

 子供たちには大学や次のステージに行った時を見据え、しっかりと意識を高く保っていこうと伝えたいんです。この困難を乗り越えるために一人ひとりがしっかりと感染しない、感染させない、自覚を持って行動しないといけない。今までは指導をしながらある程度のルールをスタッフが作ってきましたが、これから一人ひとりの行動が大切になります。いろんな人への感染リスクを下げるためにも、本当の意味で自主性が大事になって来る時期になったのではないでしょうか。

(取材・写真=松尾祐希)