(写真=森田将義)

ーー変化を感じながらも今でもきっちり指摘すべき点は指摘される姿が印象的です。

 シュートのこぼれ球を詰めなかったり、攻撃も守備も「これくらいで良いか」と甘い部分が見えた時は厳しく指摘します。指標と言いますか、「これができないと試合に出られないよ」といった基準を示さないと、子どもたちが戸惑うからです。それは大学に行こうが、プロに行こうが、最低限必要とされる部分でもあります。東山を卒業した子どもには個性を伸ばした上で、そうした部分をしっかり身につけていて欲しい部分です。

ーー様々な物事を求めすぎると、個性が削がれる子もいませんか?

 そのバランスはとても難しいのは事実です。でも、基本的にはやるべきプレーはしっかり選手に詰め込みます。我々が教えなくても、何でもできるスーパースターはほんの一握りだからです。良いプレーができずに困っている子に手を差し伸べるのが指導者の役割です。選手にはよく、「引き出しの中が空っぽなら何もできないぞ」と伝えます。引き出しに色んな物を詰めても整理できていないと、必要な時に何が入っているのか分からず使えません。時間がかかっても中に道具がたくさん入っていれば、使える瞬間が訪れます。入れてから、整理もできるため1年生の間に必要な部分をきっちり教えたり、高校3年間での逆算をしています。

ーー鎌田もそうした指導があったから、高校で大きく成長できたのかもしれません。

 鎌田は高校時代から他とは違うセンスを持った選手でしたが、他の選手と接し方を変えませんでした。わざと口酸っぱく指摘した時期もあれば、敢えて突き放した時期もありました。高校2年生から3年生になる春休みの練習試合では、スタメンから外したこともありました。それが良いか悪いかは分かりません。試合に出し続けながら変化を待つのが一番ですが、彼にはこの接し方が適していると思って、接していました。あえて鼻を折るような指導と言えるかもしれません。

ーー今はそうした鼻を折る作業がしにくい世の中になっているような気がします。

 でも、それをしなければ僕じゃないと思うんです。手を上げたり、子どもが萎縮するような指導はいけませんが、きちんと指摘すべきタイミングできっちり指摘してくれる指導を求める親御さんもいると考えるからです。厳しく指摘する姿を見て驚く中学生がいるかもしれませんが、親御さんには「何が良くて何が悪いかをきちんと教えられるのは僕ですよ」と自信を持って言えます。また、そうした覚悟を持って、来てくれる子どもや親御さんに来てもらえると嬉しいです。

(取材・写真=森田将義)