徳島市立イレブン(写真=森田将義)

ーー年々、一芸を持った選手が増えている印象があります。

 今年のチームにもボールが扱えなくても相手と競り合えて、恐れずに飛び込めるセンターバックや左利きで良いクロスやロングスローが投げられる選手など個性的な選手が揃っています。以前はグループでボールを繋ぐサッカーを目指し、足元の技術に長けた選手を重宝していましたが、身体能力が高い選手と対峙した時やプレッシャーがかかる全国大会で継続したことがうまく表現できずに負けが続いていました。県内とは違い、よりさまざまなプレッシャーのかかる全国ではできることよりもできないことの方が多い印象です。それなら、できないことが多くてもトーナメントで勝てる人材を大事にしようと考えるようになりました。また、高校で組織的に崩すサッカーを重視し過ぎても、卒業後に個人で見た際に長所が見えづらいとも気付いたのも分岐点でした。周りが絡んでくれるから活きる選手が多く、単独で突破できるかと言えば難しい。それなら、ボールの扱いが下手でも速さを活かして縦突破からクロスを上げられる選手の方が良い。以前のスタイルならミスが多くて使えなかった選手でも、今は長所を発揮してくれば良いと積極的に起用するようになりました。できないプレーはできる選手に任せれば良い。対人が強くても足元が苦手な選手は、ボールを奪ったらポゼッションできる選手に預ければ良いとの考え方です。もちろん苦手なことが全く出来なくても言いということではありません。

ーーそうした人材の変化もスタイルの変化に繋がっていそうです。

 以前はボールを持っていることが守備にも繋がると考えていましたが、今は攻撃を重視しすぎてカウンターを受けるリスクを避けるため、良い守備からカウンターを目指そうと考えるようになりました。勝負に徹するためにシンプルになり、求める選手のタイプも変わっていったイメージです。もちろん、予選を確実に突破するためには得点を奪わなければいけないので攻撃も重視しています。練習もほとんどが攻撃の練習です。

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