プライベートについて話を続けると、トッティはかなりの天然として知られている。

　「日向小次郎のタイガーショットをマネして怪我をしたことがある」、「アディダスとナイキのシューズをそれぞれ左右に履いて練習にきた」、「本屋で『悩みを50％解消できる本」を見つけ、100％解決したいからと2冊買ってきた」、「イラリーに『たまにはシェイクスピアでも読んでみたら？』と言われ、『もちろん読んだことあるよ。作者の名前が思い出せないけどな』と答えた」、「友人に『普通は3年かかるジグソーパズルをたった3か月で終わらせてやったよ』と自慢げだったが、そのパズルの箱には3years(3歳児用)と書かれていた」など、面白エピソードは枚挙にいとまがない。王子様系イケメンなのに天然でちょっとお馬鹿——。そんなところもまた、トッティが人気者たる所以だ。

　最後に、引退後のキャリアについて少し説明したい。2017年6月に現役引退すると、そのままローマでディレクターとすてフロント入り。当初は「いつか副会長になって、クラブを仕切りたい」と意気込んでいたが、アメリカ人オーナーや外部コンサルタントながら強大な権力を持っていたフランコ・バルディーニなど幹部たちとソリが合わなかったうえ、大した権限を与えられなかったため、わずか2年で愛するクラブを去っていった。

　バルディーニは1990年代、2000年代、2010年代にローマでスポーツディレクターやゼネラルディレクターなどを務めた人物だが、その当時にトッティ売却を企てるなど、トッティにとってはいわば天敵。上手くいくわけがなかった。

　その後、トッティは2020年に『CT10 MANAGEMENT』、『IT SCOUTING』という2つの会社を設立。本部をローマのエウル地区に置き、クラブ、選手、監督のコンサルティングとアシスタントを主業務としている。実質的な代理人事務所である『CT10』の顧客は、やはりトッティに憧れるローマ・アカデミー出身者が多く、中でもクリスティアン・ヴォルパート(サッスオーロ／イタリアU-21代表)がとりわけ有望だ。

　あのトッティがマネジメントおよびスカウティングの世界でどんな手腕を発揮するのか。イタリア・サッカーに関わる誰もが注目している。

(文＝増田溱斗)