U-15日本代表候補のFC多摩FW10貴田遼河
12月20日、U-15年代の日本一を決める高円宮杯 第32回全日本U-15サッカー選手権大会の準々決勝が群馬前橋総合運動公園で行われた。午前中の試合でラヴィーダが敗れたために唯一のタウンクラブとなったFC多摩ジュニアユースと、ヴィッセル神戸U-15の一戦は、U-15日本代表候補のエース貴田遼河(東京ヴェルディジュニア)が貫録の2得点をあげて神戸に逆転勝ちし、FC多摩が準決勝にコマを進めた。
赤城おろしの強風の中、風上のFC多摩のキックオフで始まった試合は最初からFC多摩が圧力を全開にしてヴィッセル神戸に襲い掛かる図となった。今までのFC多摩の戦い方といえばボールを奪ってロングボールを素早く前線に上げてFWがフィジカル勝負し、セカンドボールに殺到してゴールを目指すやり方であったが今年のチームは違う。「今までのやり方だと全国大会に出られてもベスト8を越えられない。まずは前に出て1対1のマッチアップに勝つことが大前提だが、今年からはポゼッションを重視して全国大会で勝てるチームを作ってきた」(FC多摩 平林監督)という考えでスタッフが改革に着手した初年度のチームだ。そこに圧倒的な決定力をもつ貴田を加え、「今年のチームからはJアカデミーユースに7人が行きます」(同)というハイレベルなチームに仕上がっている。その言葉通り、山倉渉(FC多摩ジュニア)を中心としたDF陣はフィジカルも高さも十分で、かつテクニシャンが揃った中盤の5人の選手はドリブルとショートパスを繰り返し、ヴィッセル神戸DFを崩そうとする。しかし貴田に厳しいマークがついている上に風下だと割り切って守備的に試合を運ぶヴィッセル神戸DF陣を崩しきれない。
そんな中、先手を取ったのは押され気味のヴィッセル神戸であった。14分に得た左CKは弾き返されたが、セカンドボールを拾って2次攻撃、3次攻撃を繰り返し、最後はCKの為に上がっていたCB阿江真嗣(SCクリヴォーネ)が蹴り込んで先制点を挙げた。風下の神戸はゴールキックからショートパスで丁寧にボールをつなぎ、小柄なキャプテン次橋大地(ヴィッセル神戸U-12)や高山駿斗(西宮SS)が抜群のボールキープ力を見せ、トップチームのスペイン化のテイストがふんだんに感じられた。しかしFC多摩の圧力がヴィッセル神戸のそれを上回り、ヴィッセル神戸はなかなかFC多摩陣地で試合を運ぶことが出来なかった。FC多摩は失点直後、左からのクロスに貴田が飛び込んでヘディングシュートがゴールに入るも、これはオフサイドの判定でノーゴール。そのまま前半は1-0神戸のリードで終了した。
FC多摩ジュニアユースvsヴィッセル神戸U-15
後半は風上に立ったヴィッセル神戸有利の展開かと思われたが、後の無いFC多摩が前半以上に圧力をかけてボールを奪いに出た。そしてボールを奪うと、前線が混んでいるとみると判断良く攻撃を一度キャンセルし、DFにボールを戻してロングボールを使うようになったのだ。前半はマークが厳しい貴田が比較的下がってきてボールを受けていたが、「CBの背後を取るように貴田に指示しました。そうするとCBの両脇が空くので、山倉にはそこにロングボールを出すよう指示しました。」(FC多摩 平林監督)という的確な指示をハーフタイム受けた二人がその通りの展開から同点ゴールにつなげた。54分、山倉から逆回転で前方に蹴られたロングボールはCBの頭を越えるころには逆風で失速し、裏に走り込んだ貴田が飛び出してきたGKの頭を越える技ありの浮き球右足アウトサイドシュートで同点ゴールを決めた。
「相手のプレッシャーを避けるためにロングキックに頼るより、ショートパスでしっかりポゼッションして攻める事を目指しています」(ヴィッセル神戸 岡本監督)の言葉通り、神戸は風上に立ってもゴールキックからショートパスをつなぐやり方を貫いた。また点取り屋のCF高山は前半途中からトップ下に位置を変え、さらに後半になるとボランチにポジションを変えたが、これはコーチの指示ではなく自分の判断で回りに指示して行ったとのことだ。簡単そうに見えてなかなか出来ることではない。今年のメンバーは全員がユースに昇格することが決まっている大変レベルが高い学年であり、試合を観ていてもそれがうなずける。
しかし試合を決めたのは「毎試合3点取る」と公言するFC多摩のエース貴田だった。65分、左からのクロスがゴール前で折り返され、そこに走り込んだ貴田が最後に押し込む形で逆転に成功した。ヴィッセル神戸も反撃に出る。失点直後の得たペナルティボックス右のフリーキックを次橋が直接狙うが無念にもボールはクロスバーを叩き同点とはならなかった。その後のヴィッセル神戸の反撃を凌ぎ切ったFC多摩が2-1で勝利し準決勝にコマを進めた。
▽第32回全日本U-15 サッカー選手権大会
第32回全日本U-15 サッカー選手権大会