帝京集合写真(写真=矢島公彦)

 10年大会ぶりのインターハイ出場に導いたのは、2人の3年生だ。

 6月19日にインターハイの東京都予選準決勝が行なわれ、帝京堀越と対戦。後半4分までに2-0とされたが、終了間際に同点に追い付いて延長戦の末に勝利を手にした。

 0-1で迎えた後半。帝京はいきなり出鼻を挫かれ、4分に2失点目を喫した。しかし、12分に途中出場のMF山下凛(2年)が1点を返し、反撃の狼煙を挙げる。以降も主導権を握って決定機を作り出すが、なかなか2点目が奪えない。

 無情にも時計の針は進み、残された時間は後半のアディショナルタイムのみ。ここから2人の3年生が躍動する。1人目はCB荻野海生(3年)だ。40+4分、入江羚介(3年)の右CKに荻野が反応。頭で合わせ、値千金の同点ゴールを奪った。

 そして2人目が後半9分に投入されたMF福地亮介(3年)だ。フィジカルの強さを生かしたドリブル突破と正確なキックでチャンスメイクするなど、存在感を示していたアタッカーは延長後半3分にゴール前でボールを受けると、右足を一閃。「前を向いて、あとはカーブで流し込む」と本人が思い描いた通りの一撃がネットに吸い込まれ、チームに全国行きをもたらす決勝弾となった。

【フォトギャラリー】 帝京 vs 堀越

 今年のチームは2年生が多い帝京。23人が登録される決勝のメンバーを見ても、3年生はわずかに6名しかいない。3年間ともに歩んできた仲間たちの大半は学校で戦況を見守っており、彼らのためにという想いがあったのは言うまでもない。

 特に福地は元々レギュラー組の選手だが、メンタル面の問題からチームを離脱。この試合の1週間前に全体練習に復帰し、準決勝で今大会初のベンチ入りを果たしていた。だからこそ、今までチームに迷惑をかけた分を堀越戦で取り戻したいと考えていたという。

 「自分たちの代はレギュラー組が少ない。今試合に出ていない選手たちの気持ちを背負って、(全国優勝の証としてユニホームに描かれている星を)10個に増やすために戦っていた。準決勝で戻ってきたけど、仲間の中には絶対によく思っていない選手もいたはず。だから、結果で信頼を取り戻したかった」

 2人の3年生が期待に応えた帝京。10年ぶりにインターハイへ挑むが、これがゴールではない。本大会で勝ち上がり、帝京の名を再び全国に轟かせるか。そのためには下級生を支える3年生たちの活躍が必要不可欠だ。

▽令和3年度全国高校総体(インターハイ)東京予選
令和3年度全国高校総体(インターハイ)東京予選