あと一歩だった。冬の高校サッカー選手権から15年遠ざかり、インターハイは2013年度が最後の出場。今夏のインターハイで8年ぶりの全国舞台を目指したものの、武南は決勝で涙を飲んだ。

 6月23日、インターハイの埼玉県予選決勝が行われ、武南は正智深谷に0-1で敗れた。立ち上がりは今予選から導入した3-5-2の布陣が機能し、両ウイングバックが積極的に攻撃へ参加。中盤でもアンカーの山田詩太(2年)、インサイドハーフの森田颯(2年)を軸にテンポ良くボールを動かし、試合の主導権を握った。10分には左ウイングバックの加藤天尋(2年)がゴール前にライナー性のクロスを供給。右ウイングバックの重信有佑(2年)が決定機を迎えるなど、序盤から相手を押し込んだ。

 しかし、良い流れは続かない。好機をモノにできずにいると、逆に23分に一瞬の隙を突かれてしまう。GK牧之瀬拓人(2年)が前にポジションを取ると、正智深谷のFW山口陽生(3年)にハーフエーラインを過ぎたあたりからロングシュートを放たれる。意表を突かれた一撃がネットに吸い込まれ、相手に先行を許した。

 以降もボールを動かしながら攻撃を仕掛けたが、時間の経過とともに焦りの色が濃くなる。ロングボールが多くなった後半はフィジカルで勝る正智深谷の土俵に乗ってしまうと、自分たちの良さを失った。セットプレーから何度かチャンスを作ったが、最後まで無得点。実力差はなかっただけに、悔やまれる敗戦だったのは間違いない。

 試合後、内野慎一郎監督は選手たちを労いながらも素直に敗戦を認めた。

 「選手には言ったのですが、自分たちに足りないものがあった。点が取れなかったし、今日は負け試合。相手の戦略もあった中でこじ開ける方法を考えたけど、それを見つけられなかったのは自分たちの未熟さ」

 とはいえ、今予選で得たものはある。今年のチームは2年生主体で決勝は8人の選手がスタメンに名を連ね、試合の運び方を学んだ。

 「重信が最初のチャンスを仕留めきれなかったら、状況が苦しくなる。たまたましれないけど、決定機をきちんと決めるチームは強い。正智深谷さんは状況を判断してファーストチャンスを決め切った。自分たちもそこをやらないといけない。関東大会もそうでしたが、決定力は冬に向けての課題です」(内野監督)

 昨年のチームでレギュラーだったのはFW水野将人(3年)のみ。それを考えれば、決勝まで戦った経験は財産となる。夏に味わった悔しさを次に繋げられるか。今冬の高校サッカー選手権で全国舞台復帰を成し遂げるためにも、正智深谷戦の敗戦は無駄にできない。

▽令和3年度全国高校総体(インターハイ)埼玉予選
令和3年度全国高校総体(インターハイ)埼玉予選