抱き合う正智深谷イレブン(写真=石黒登)

 各地で行われていたインターハイ予選も23日にそのすべてが終了。出場全52代表が出揃った(開催県の福井、北海道、東京、神奈川、大阪は2枠)。神奈川では関東大会に出場した日大藤沢桐光学園に加え、昨年の選手権覇者・桐蔭学園がベスト8で敗退、また千葉ではプレミアリーグ所属の市立船橋が同じく準々決勝で姿を消すなど波乱もあった。

 埼玉においては昌平の敗退が驚きを持って受け入れられただろう。プリンスリーグではいまだ無敗(4勝1分)を誇っており、今大会でも優勝候補の筆頭だった。準決勝の相手はここ数年凌ぎを削ってきた正智深谷。前半から昌平がボールを持って進めたものの、正智深谷はライン間をコンパクトに保って強力アタックを封殺。そして後半のワンチャンスを決めきって2019年のインターハイ予選3回戦以来となる宿敵撃破を果たした。

 昌平は前日の準々決勝・立教新座戦もブロックを敷いてくる相手を攻略するのにやや時間がかかった。藤島崇之監督は「(プリンスとは)相手のスタンスが変わってくる。Jクラブとやると真っ向勝負になる中で、カウンター的な要素で来るチームが県内には多いのでそういった状況の違いはある」と県仕様の戦いにやや苦戦した様子。普段であれば新人戦でアジャストできるタイミングがあったが、今年は緊急事態宣言下だったこともあり大会自体が中止に。一昨年からはプリンスリーグに所属しており、関東予選は参加していなかった。

 また関東覇者の西武台も準々決勝で姿を消すこととなった。対戦した浦和東は関東予選1回戦敗退からチームのためにそれぞれが走り、声を出して、球際でファイトする「浦東らしさ」を追求。前半終了間際にセットプレーから先制点を許したが、後半は今年のチームの特徴である攻撃の特徴を出して逆転勝利を収めた。西武台は多くの時間で攻め込んだが、ボランチを経由していく攻撃がなかなか出せずに停滞。また、今大会での復帰を目指していたDF長谷川智紀(3年)、関東本大会で再負傷したFW細田優陽(3年)の不在も大きかった。

関東覇者の西武台は浦和東に敗れる

 とはいえ、これは埼玉県全体のレベルが引き上がっているとも言える。優勝した正智深谷はこの期間で堅守という武器を極限まで高めてタイトルを獲得。まだ攻撃には課題があるが、今大会は数人のけが人を抱えていたこともあり、冬の予選ではまた違ったサッカーを展開するかもしれない。準優勝の武南も関東本大会など高いレベルを経験したことで選手たちの目線もアップ。インハイ予選では3-5-2(5-3-2)のシステムで伝統のパスワークとサイドアタックを交えたひとつ上の攻撃を披露。決定力という部分には課題を残したが、今後が楽しみなチームだ。

 浦和東も例年にない「攻撃」という特徴のあるチーム。また、堅守からのセットプレーという明確な武器のある浦和西、浦和南に加え、県リーグでは正智深谷を破り、現時点で3位につける市立浦和など、ここ2年、やや元気のなかった浦和勢も今年は再び存在感を放ちつつある。

 もちろんここに昌平、西武台も関わってくるだろう。インハイを逃した昌平だが、U-18日本代表候補GK西村遥己(3年)、U-17日本代表候補MF荒井悠汰(2年)など、タレント力はピカイチで冬も本命候補。それに続く層を誇る西武台も今年は交代カードを含めて面白い選手が揃っており、関東本大会を11年ぶりに制するなど県外のトーナメントでも実力を証明。この2強も今回負けた悔しさをバネにさらに大きく成長して選手権に乗り込んでくるはずだ。

(文・写真=石黒登)

▽令和3年度全国高校総体(インターハイ)埼玉予選
令和3年度全国高校総体(インターハイ)埼玉予選