正智深谷を7大会ぶり3回目の全国に導いた小島時和監督

 インターハイ埼玉予選決勝で武南を破り見事優勝を果たした正智深谷。準決勝では優勝候補筆頭の昌平も破り、2回戦から決勝まで5試合を全て1-0のスコアで勝ち抜いた。日本代表のオナイウ阿道(横浜F・マリノス)を擁し全国4強になった2013年ぶり3回目のインターハイ出場を決めた決勝戦後、小島時和監督にお話を伺った。

ーーまず今日の試合を振り返ってもらえますか?

 まだまだ内容としてはインターハイや選手権予選でやっていかないといけないなという反省点はあります。ただ、8年ぶりの代表、初優勝という部分ではよく厳しい中でもみんな頑張って、一致団結しながらもぎ取ってくれた。子供たちはよくやってくれたなと思います。

ーー武南は昌平とはまた違った強さがあったと思いますがどうでしたか?

 準々決勝までは長いボール、準決の昌平はドリブル主体とそこまでは対応できたんですが、武南は揺さぶってくるサイドチェンジがあったのでそこは警戒していました。おまけに武南はみんな上手いので、落ち着いてボールを動かされたんでこっちも少しでも穴を開けると厳しいという事で、そこはスペースを埋める、斜めのボールが来る、というのは練習の中でインプットさせていました。そこはまあまあよく対応してくれたと思います。こっちとしても前で起点を作って相手の攻撃の回数を少なくしたいなと思っていたんですが中々上手くいかなかったので、途中からは今まで通り頑張って耐えて耐えてっていうところを期待するしかなかったです。ただGK小櫃は今大会当たっていて今日もナイスキーパーだったし、CBの森下もよく守ってくれました。一人一人はそんなに強い力ではないけど、それぞれがこの舞台で力を発揮してくれて、協力してやった結果じゃないかなと思います。

ーー山口君のシュートはスーパーでしたね?

 そうですね、我々は彼がエースだと思っているんですけど、今大会一点も取れていなかったので、練習でも「(山口)陽生の番かな」と言っていたんです。彼もストレスがあったと思うので狙っていたと思います。見事でしたね。もう一本惜しいのがありましたし、出来れば後半もう一点取って楽な展開にと思ったんですけど、まあこの大会は1-0だろうと。「1-0のドラマ完結」というところですね。失点ゼロで埼玉県予選を抜けるっていうのは立派だと思います。長い時間のゲームの中で集中を切らす時がどのチームもあると思うんですけど、今大会は最後までこの色が出ていたんだと思います。それが彼らの自信になって「ここだけは僕らは負けない」っていうのが伝わってきたし、そこだけは信じてみていられましたね。

ーー山口君の特徴だったり、期待しているところは?

 シュートが上手いですから、今日みたいな納めてからのシュートも上手いですし、センタリングからも飛び込んで取れます。リーグ戦でもたまに決めます(笑)。エースはここ一番に決めるのがエースだから「お前のステージが出来たぞ」って言っていたんですがよく決めてくれましたね。

埼玉県予選を勝ち抜いた正智深谷

ーーベンチから見ていて1-0の状況は苦しいと思うんですがその辺は大変でしたか?

 苦しいですね。もうきついきついの連続でどっと疲れました。昨日もスタッフと話した時に「4-0とか5-0とかのゲームで楽したいよな」と話していたんですが、「そんなゲーム一度もないんだから、1-0もしくは延長PK、そんなゲームだから覚悟しよう」ということで、本当にスタッフも頑張ってくれたと思います。スタッフ、選手、スタンドが一致団結してるなと凄く感じていて、それもあって最後はうちが勝つだろうっていうのは思っていました。

ーートーナメント的にもかなり厳しところを勝ち上がってきましたが?

 そうですね、とにかく昌平戦があったので「誰もが昌平だろう」というところに一杯食わしたいと思っていました。やっぱり昌平を倒した後のこの決勝なので、本当に難しい試合でした。武南も上手いし、今までと違うタイプだし、そこはどうなのかなっていう。そういう意味では前半を1-0でいけたことで楽になったし、あれが0-0で行くと延長になってどうなるかわからないので、あれだけ武南みたいに、昌平もそうなんですが組織でゴール前まで運んでくる。そういうチームは最後強いので、うちとしては1点があったのでこういう守備が出来た。そのまま無事に終わってくれてよかったです。

ーー今大会前半に点を取ったのが初めてでしたが、そこから長く感じましたか?

 とは言っても、0-0と1-0では気持ちが違いますよね。前半は「負けないで帰って来い、後半は勝って帰って来い、そうすれば勝ちだから」って言ったんです。でも前半勝って帰ってきたんで、そういう意味で、向こうは点を取りに来るのでチャンスだと言っていました。しかも武南が得意な部分を捨てて長いボールを入れてきたので「うちはロングは得意じゃないか」と言っていました。でもセカンドボールを拾えなかったのできつかったですが、よく我慢してGK中心にみんなで守れたと思います。上手くいかなくて交代して悔しがっていた選手もいたので、インターハイまでに成長してくれるんじゃないかなと思います。

ーー前回インターハイ出場した時とのチームの違いはどうですか?

 あの時とは持っているスキルも違う。(日本代表のオナイウ)阿道(横浜F・マリノス)がいましたし比べ物にはならないです。でも今回、阿道が日本代表でハットトリックをしたタイミングでインターハイ予選が始まって、今年のチームにはそんなに期待していなかったんですが、初優勝を出来たっていうのには何か縁があるなと感じました。今年のチームは正直そんなに期待はしていなかったんですけど、初優勝という事で、阿道の流れもあるし色んな流れがあるのかなと思いました。

ーーインターハイで勝つためにはどの辺りを改善したいですか?

 攻撃ももっとしっかり出来ないとダメだし、守備の部分はいいと思うんですけど、やっぱりちゃんと攻撃の形を作って、状況判断ができて怖いところを突く判断がもっとできないと、今日みたいに耐えて耐えて頑張って偶然に攻撃のチャンスになって攻めてる。それだけなので、これだと事故、神頼みのゴールになってしまうのでこの戦い方だと全国では厳しいと思います。起点を作って落ち着いてシュートまで行ける形を作らないと。インターハイのみならず選手権埼玉予選だってそんな簡単にいかないのでそういうところを上げていこうと思います。

ーーインターハイの目標を教えてください

 埼玉県代表なので最後まで負けたくないです。優勝なんておこがましいんですけど、一戦でも多く目の前の相手を倒していって、昌平を倒したチームといわれると思うんで「こういう粘りがあるんだ」ていうところを出していきたいと思います

(文・写真=会田健司)

▽令和3年度全国高校総体(インターハイ)埼玉予選
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