青森山田MF松木玖生

  終わってみれば3-0の快勝。1回戦屈指の注目カードは青森山田の完勝だった。

 8月14日に行われた令和3年度全国高等学校総合体育大会・サッカー競技大会の初日。優勝候補の青森山田は1回戦で名将・小嶺忠敏監督が率いる長崎総科大附と対戦し、序盤こそ相手のロングボール攻勢に苦戦したものの、堅実な守りと多彩な攻撃で勝利を挙げた。

 試合終了のホイッスルが鳴ると、選手たちは一様に安堵の表情を浮かべながら勝利を喜んだ。しかし、キャプテンを務めるMF松木玖生(3年)は勝利を喜ぶ一方で悔しさを滲ませていた。

 「前半は相手のサッカーに合わせ過ぎて、蹴り合いになってしまった。だけど、後半は良い感じに前のコンビネーションを出せて、得点を取ることができたので良かったと思う」

 試合後、青森山田の10番は冷静に内容を振り返ったが、個人の出来について口を開くと様子が一変した。

 「やっぱりゴールを決めたかったという想いが強い」

 外から見る限り、長崎総科大附戦の松木が決して悪かったわけではない。むしろ身体は動いており、正確なパスとフリーランで相手に脅威を与えていた。しかし、チーム最多となる4本のシュートを放ちながら無得点。35分に放った左足のシュートは枠の外で、この試合最大の好機となった後半開始直後の決定機も完璧なタイミングでクロスに合わせながらバーを越えてしまった。

 今季が始まる前、松木はこう話していた。

 「去年は迷いがあった。前に安齋(颯馬)がいて、後ろに(宇野)禅斗がいる布陣。(2シャドーの一角としてプレーしたが)自分のポジションが明確ではなく、自分自身のプレーができなかった。なので、今年はよりゴールに着目してやっている」

 結果を残さなければ、評価されない。卒業後の海外挑戦も視野に入れる10番は、ゴールを奪う意味を誰よりも理解している。下を向いている暇はない。16日に行われる2回戦。初芝橋本戦は自らのゴールでチームを勝利に導き、自身の存在価値を自らの足で証明して見せる。

(文・写真=松尾祐希)

▽令和3年度全国高校サッカーインターハイ(総体)
令和3年度全国高校サッカーインターハイ(総体)