チームを決勝に導いた履正社MF那須大雅

 3試合連続のウノゼロで連覇に王手をかけた履正社。準決勝の相手はインターハイ全国16強の強敵大阪桐蔭。その大事な準決勝のスターティングメンバーには今大会これが初スタメンとなる14番MF那須大雅の名前があった。

 「この予選のスタメンが初めてで、フィジカルの練習もしていなかったのでスタミナ的にも"大丈夫かな?"っていうのもありました。でも交代出来る選手もいっぱいいるしやれるだけの事はやろう!」と試合に臨んだ那須。体力的に行けるところまで全力で行こうと決めていた那須に12分、MF名願斗哉からパスが来ると「前半の早いうちにシュートを打っておこうと思っていた」と前後半80分の事は考えずに、ある意味空気を読まずPA外からシュートを放った。

 その那須の積極性が功を奏し、シュートは相手GKのファンブルを誘いゴールに吸い込まれた。結局この那須のゴールが決勝点となりチームは2年連続の決勝に進出。平野直樹監督は「博打でした」と那須の先発起用が賭けだったと明かしたが、「ちょっとでもチームに勢いをつけれるようにと思っていた」としっかり指揮官の期待に応えた。

 昨年、履正社が選手権の大阪代表となった際、メンバー選考で那須はボーダーラインギリギリで落選。当時、那須は「(選手権のメンバーに)入ろうと思って、選手権に出たいって思っていたんで外されて悔しいですけど、その分自分たちの代で活躍して全国に出たい」と語っていた。

 そして新チームとなり自分たちの代で挑んだ今年のプリンスリーグ。那須は背番号10を背負い開幕戦となった京都橘戦でPKからゴールを決めてまずまずのスタートを切った。インターハイ大阪予選では6回戦の桃山学院戦で難しい角度のFKを直接決め那須のゴラッソで先制するも、その後チームは追い付かれPK戦で敗退。その後は進路の壁にもぶつかった事もあり、徐々にスタメンから外れることも多くなった。

 「力があるのはわかっているんですが、進路が決まっていないので塾に行きながら、練習もみんなと出来る時間は半分。彼の中でも葛藤があって、サッカーとは距離を置いて受験勉強に専念しようかという悩みもあって、スッキリして挑めない時期もありました」と平野監督が明かしたように、那須は悩みながらサッカーを続けていた。

 「選手権で全国に出るのが一番の夢だったので、この大会の為に練習もずっとやってきました。悩んで親にも平野先生にも相談したんですけど、ちょっとでもチームの為になれればと思って、最後はチームに残って勉強とサッカーを両立すると決めました」と答えを出してこの選手権に挑んでいた。

 ヨドコウ桜スタジアムのピッチに立ち「ここでやりたいって思っていたので、緊張もしましたしテンションも上がりました」と笑顔で話した那須は吹田スタジアムで行われる決勝の舞台に「これ以上の緊張があると思って覚悟しています(笑)」と目を輝かせた。夢の全国まであと1勝に迫り「次も出番がもらえたら点も決めたいし、守備でも貢献したいです。阪南を倒して全国に行きます」と、迷いを振り切った那須が決勝の舞台でも自慢の左足を振り切る。 

(文・写真=会田健司)

▽第100回全国高校サッカー選手権大阪予選
第100回全国高校サッカー選手権大阪予選